新労使協定効果てきめん、ドラフトのくじ引きで敗れたロイヤルズがFA市場で1億ドルの積極補強

2023年12月26日 11:58

野球

新労使協定効果てきめん、ドラフトのくじ引きで敗れたロイヤルズがFA市場で1億ドルの積極補強
今季はレンジャーズで世界一となったウィル・スミス(AP) Photo By AP
 MLBは1965年にアマチュアドラフト制度を導入。成績の悪いチーム順に指名権を得る完全ウェイバー制度となった。しかしながらその制度も有望選手にスコット・ボラス代理人のようなアドバイザーが付くことで、年々契約金が高騰。スモールマーケットのチームはトップ指名権を持っていても、事前の交渉で契約できないと分かった場合は、目玉選手の指名を控えるようになった。そこで2012年からの労使協定で各チームが払える契約金総額に上限を定めた(ボーナスプール)。
 しかもメジャー契約ではなくマイナー契約で、複数年契約も結べなくなった。結果、資金力に関係なく、どのチームでも目玉選手を等しく指名できるようになった。

 ところが、今度は金銭面での心配をせずに目玉選手を取れるというので、完全ウェイバー制度を悪用し、勝つ努力をせず、意図的にトップ指名権を得ようというチームが目立つようになった(タンキング)。そこで22年からの労使協定では、上位ドラフト指名権をくじ引きにするように変更した。

 くじ引きはウィンターミーティング中に行われるが、既に2度実施され効果はてきめんだ。成績を残していないアスレチックスは22年、トップ指名権を引く確率は16・5%でナショナルズ、パイレーツと並んで一番上だったのに、くじ引きの結果6番目の指名順。23年もトップ指名権を引く確率はロイヤルズ、ロッキーズと並んで一番上の18・3%だったのに4番目になった。しかも収益分配制度で金銭を受け取っている側のチームは3年連続でくじ引きに参加できない。つまり来年の指名順は著しく下がる。

 アスレチックス以外に運がなかったのがロイヤルズだ。22年はMLBで5番目に低い成績だったのに、くじ引きの結果指名は8番目に。23年は2番目に低い成績で、トップ指名権を引く確率は18・3%だったのに、指名順は6番目となった。

 そこでロイヤルズは19年11月に就任したジョン・シャーマンオーナーの号令の下、ドラフトだけに頼らず、今オフはFAで積極的に補強することにした。既に左腕ウィル・スミス(34)と1年500万ドル(約7億1000万円)、ギャレット・ハンプソン内野手(29)と1年200万ドル(約2億8000万円)でサインしていたが、ウィンターミーティング後に、セス・ルーゴ投手(34)と3年総額4500万ドル(約64億円)、マイケル・ワカ投手(32)と2年総額3200万ドル(約45億5000万円)、クリス・ストラットン投手(33)と2年総額800万ドル(約11億4000万円)、ハンター・レンフロー外野手(31)と2年総額1300万ドル(約18億5000万円)。6人のFA選手に総額1億500万ドル(約149億円)を投資している。

 この金額はこのオフ、ドジャース、フィリーズ、ダイヤモンドバックス、ジャイアンツに次ぐ5番目になる。ロイヤルズは7年連続負け越しで、昨季も56勝106敗。23年のチーム防御率は5・17で28位、チームOPS(出塁率+長打率)も・701で24位と弱い。しかしながらレベルが低いとされるア・リーグ中地区で、ホワイトソックスは現時点でエースをトレードしようとしているし、ツインズやガーディアンズもサラリー総額を削減しようとしている。一気に浮上するチャンスがあると考えた。労使協定でドラフト制度がくじ引きになったのは選手組合の主張で、タンキングで勝つ気がない球団が増え、実力のあるベテランFA選手でも契約してもらえないケースが目立つようになっていたため。そこにロイヤルズの1億ドルの出費で、まさに狙い通りになった。

 現時点でロイヤルズの24年のサラリー総額は1億1170万ドル(約158億8000万円)。18年以来の高い金額になった。しかも補強は終わりではなく、ブルペン投手と、複数のポジションを守る左打ちの内野手を狙っている。

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