【内田雅也の追球】「選ぶ」というアピール

2024年02月19日 08:00

野球

【内田雅也の追球】「選ぶ」というアピール
<練習試合 広・神>2回、前川は四球を選ぶ(投手・斉藤)(撮影・大森 寛明) Photo By スポニチ
 【練習試合   阪神4ー0広島 ( 2024年2月18日    沖縄 )】 「歩いては海を渡れない」は、ドミニカ共和国やベネズエラなど中米の若い野球選手の合言葉だ。何度か書いてきた。
 「歩く」は米語「ウオーク」で四球の意味。「海」はカリブ海だ。海を渡り、大リーグ入りしたいのなら、四球を選んでいてはダメだ。スカウトにアピールするには打って出ろというわけだ。

 だから、中米出身の打者は悪球打ちが目立つ。「チェース」というボール球を追いかける頻度も高い。四球より強打を見せようとした若い頃の癖が抜けないのだ。

 プロ野球のキャンプもアピールの場には違いない。特に若い選手は監督やコーチの目をひこうと懸命である。ともすれば中米の打者のように、悪癖がついてしまう。

 だからだろう。阪神監督・岡田彰布は前日17日の練習試合・楽天戦(宜野座)で「ヒットを打つことだけがアピールだと勘違いしている」と苦言を呈した。盗塁のサインが出ていても初球、2球目に凡飛を上げた栄枝裕貴、前川右京に待球する姿勢を説いた。「犠牲といっても1球ぐらい待つのは大した犠牲でもない。それがチームのためにもなる。野球観を見直すべきだろう」

 18日の練習試合・広島戦は、そんなフォア・ザ・チームの犠牲的精神の観点で見た。まず目についたのが選球である。阪神は計6個の四球を選んだ。昨年、大きな武器となった四球は年を越えても生きていた。

 1回表2死二塁から佐藤輝明、森下翔太が連続四球。2回表2死、前日苦言を受けた前川がカウント2―2から際どい外角直球、スライダーを辛抱した。8回表1死一、三塁では井上広大がフルカウントからのランエンドヒットで低めスライダーを見極めた。

 岡田は「内容的にすごいいいよ。サインもなく、勝手に“打て”言うてるのに、見極めとか四球選ぶとか」と、15長短打はもちろん6四球に満足していた。昨年開幕前、自身が球団に掛け合い、四球の年俸査定ポイントを引き上げた逸話を引き合いに出し「まだ査定はないで、四球の」と笑いを誘った。

 「自然に体に染みついて、普通にボール振らない。自分のもんにしたらこっちのもんやからな」

 昨年からのメンバーについての評価だが、チームに浸透しているのも確かだ。若い前川も井上も選球でアピールできたとみている。 =敬称略= (編集委員)

おすすめテーマ

2024年02月19日のニュース

特集

野球のランキング

【楽天】オススメアイテム