【内田雅也の追球】「快打正面」の経験則

2024年03月04日 08:00

野球

【内田雅也の追球】「快打正面」の経験則
<日・神>バックに声をかける阪神・才木(撮影・大森 寛明) Photo By スポニチ
 【オープン戦   阪神5―6日本ハム ( 2024年3月3日    札幌D )】 阪神監督・岡田彰布は今遠征で札幌入りする前日(2月29日)、「ゲームの中で結果を出さんと生き残れん」と話していた。定位置争いや1軍当落線上の若手打者に関する話である。
 「見た目悪くても、ポテンヒットでも、結果出るヤツが生き残ると思うよ。ええ当たりが正面行くヤツって、やっぱり打ち方悪いんやろな。ほんま、オレそう思うよ」

 なるほどと思った。当欄で何度か紹介したが、伊良部秀輝が投手の立場で同じ話をしている。

 「見た目は三振の方が格好いいだろうけれど、僕の場合はカーンと打たれても、野手の正面を突く方がいい」「きちんとしたフォームで投げていれば、いい当たりをされても野手の守っているところにボールは行く」

 代理人だった団野村の『伊良部秀輝――野球を愛しすぎた男の真実』(PHP新書)にある。

 勝手に「快打正面」の原則と名づけていた。投手なら好調、打者なら不調の兆しである。

 その点で言えば、この日の阪神先発・才木浩人は好調だった。立ち上がりから相手打者がとらえた快打が、ことごとく野手の守備範囲に飛んだ。

 1回裏。郡司裕也の初球強振した三塁線ゴロ(佐藤輝明好捕)に遊撃、右翼へのライナーで3者凡退。2回裏1死、万波中正の中堅へのライナーも安打性だった。

 3回裏には伏見寅威の強烈な打球を左足首に受け、ヒヤリとする場面もあったが、4回をこの内野安打1本で無失点と上々の結果を出した。速球とフォークで三振も3個奪い、41球でまとめた。

 先の原則からすれば、この結果はフォームや投球内容も良かったことを意味している。

 反対に、3番手で登板し、7回裏に一挙5点を失った及川雅貴は打ち取った打球が野手の間に落ち、また抜けていった。浅間大基が合わせた左前打、今川優馬のゴロは遊撃左を抜け、郡司が当てた小飛球は右前への逆転2点打となった。生き残るには、これを不運と片づけてはならない。

 セイバーメトリクスには「投手はBABIP(インプレー打率)をコントロールできない」という説がある。奪三振、与四球、被本塁打だけで投手を評価する「FIP」との指標もある。

 しかし、岡田も伊良部も経験から知っている。投手も打者も無意識のうちに打球を操っているのだろう。 =敬称略= (編集委員)

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