日本ハム・栗山CBO 環境を自ら生かす――白銀の世界で生き抜くうさぎが教えてくれた

2024年03月05日 06:00

野球

日本ハム・栗山CBO 環境を自ら生かす――白銀の世界で生き抜くうさぎが教えてくれた
栗山英樹氏の色紙 Photo By スポニチ
 侍ジャパン前監督で日本ハム・栗山英樹チーフ・ベースボール・オフィサー(CBO=62)による連載「自然からのたより」は、人と環境の関わりについて。この冬、白銀の北海道栗山町にたくましく生きるうさぎの姿に学びがあった。頭に浮かぶのは哲学者、思想家であり歴代首相の指南役も務めた安岡正篤氏の名言。人は環境をつくるからこそ人である――それを忘れてはいけないと、うさぎたちが教えてくれた。
 冬と言われた今年の冬。でも、自宅のある北海道栗山町には例年のように、白銀の世界が広がった。真っ白な雪の上に小さな足跡を残すのは、裏山に住むうさぎたちだ。

 警戒心の強い彼らはそう簡単には姿を見せない。たまに見かける彼らはこの時季、白い毛に覆われている。夏場は茶色い毛で野山を走り回るのが、この時季は雪景色の中に溶け込んでしまう。これは雪の中で敵に見つからないようにするためだそうで、彼らは生きるために環境をしっかり生かしている。そんなうさぎの姿を見て浮かんだ言葉がある。

 これは安岡正篤氏が残した言葉だ。この前段には「環境が人をつくるということにとらわれてしまえば、人間は単なる物、機械になってしまう。人は環境をつくるからして、そこに人間の人間たるゆえんがある」と記している。まさしくその通りだ。環境に支配されてしまえば新たな発見も進歩もなくなる。環境を生かす、自ら環境をつくってこそ前へ進む。

 例えば、野球界では今、データ運用の重要性が高まっている。打球速度やボールの回転数などさまざまなものを数値化し、技術やパフォーマンスの向上に役立てている。それ自体は悪いことではない。ただ、スイングスピードを上げることは重要な要素の一つだが、それだけにとらわれてしまうと、その選手が持つボールを捉えるタイミングやバットコントロール、個人の感覚的な部分が損なわれてしまう可能性も出てくる。要はいかに数値を生かして技術を高めるか。スイングスピードを上げつつ、個人の感覚も生かす。その両立が求められる。データなど進化する野球の環境を自らに生かせるか、どうかの勝負。それを忘れてはいけない。

 自然も、社会も便利になればなるほど人を弱くする。新しい発想がなくなり、進化が失われるからだ。環境に支配されるとは、そういうことだ。便利な世の中だからこそ、環境を自ら生かしていかなければならない。

 ▽うさぎの毛 うさぎには暑い夏と寒い冬に向けて毛が生え替わる換毛期がある。気温や日照時間などの影響という説もある。個体差はあるが、野生の野うさぎは換毛で毛色が変わり、夏は茶色、冬は白に変わることが知られている。冬に白へ換毛するのは、雪景色の中で敵に見つかりにくくするためだと言われている。

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