「魔法のフレーミング」の持ち主 球審に文句を言わない理由が神すぎた 元NPB審判員コラム

2024年03月16日 22:12

野球

「魔法のフレーミング」の持ち主 球審に文句を言わない理由が神すぎた 元NPB審判員コラム
<スポニチ大会 日本製鉄鹿島・セガサミー>4回、ベンチへ戻るセガサミー・須田(左)。右は古屋敷(撮影・木村 揚輔) Photo By スポニチ
 JABA東京スポニチ大会決勝が14日に行われ、Hondaが日本通運を7-0の8回コールドで下して18年以来、6年ぶり3度目の優勝を決めた。今年の日本選手権出場権も獲得した。
 
 初優勝を狙ったセガサミーは準決勝で敗退。攻守でチームをけん引したベテランの須田凌平捕手(31)は優秀選手賞を受賞した。

 記者は11年から16年までNPB審判員を務めた経験があり「球審の目」で捕手を観察している。

 人間がジャッジするためストライクゾーンは捕手のキャッチングで変わる。セガサミー・須田の捕球技術はNPBを含め日本トップレベルと断言できる。21年には社会人ベストナインを獲得。選出理由には高打率に加え「フレーミングのうまさ」とあったほど、その評価は社会人野球関係者の中でも高い。今大会もネット裏で公式記録をつけた各チームのマネジャーたちが「1試合で10球は須田さんの力でストライクになった」と声をそろえていた。

 須田の真骨頂は「低め」。低めをストライクに見せるためにはミットを「下から上」へ動かす必要がある。逆の動きをするとミットが捕球した地点よりも下がるため、球審からは「ボール」に見えがちだ。だが「下から上」の動きはあくまで「捕球する前」の話。捕球から一タイミング置いた後にミットを動かすと、球審は「ボールゾーンからミットをストライクゾーン動かした」と判断し逆効果になる。NPBでもこの「加減」が分かっていない捕手がいる。

 須田は絶妙な加減で、捕球する時には「ビタッ」とミットが止まっているように見せる技術を持っている。ストライクを生む「魔法のフレーミング」だ。そんな須田がマスクをかぶった試合を観戦した記者はあることに気づいた。球審は1試合に数球から多い時は10球ほど投球判定で「ミス」することがある。

 私がネット裏の記者席から見て「これはミスだ…」という投球判定があった時でも、捕手を務める須田は少しも態度に出さない。「あれほどの技術を持った捕手ならば文句を言ってもおかしくない」と思った。事実、私の現役時代は己の技術に自信を持つ捕手ほど球審にクレームをつけてきた。記者は試合後の須田に理由を直撃した。

 「際どいなと思いながら捕っているので、ストライクと言われたら“ラッキー”くらいに思っています。あまりそこにイラッとはしない。それに“もっとうまく捕れる”と思いながらやっています」

 自らの技術におごらず、向上心を持ち続ける31歳。野球選手としてだけでなく、社会人として大事なことを教わった。(元NPB審判員、アマチュア野球担当キャップ・柳内 遼平)

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