【中日1位金丸・特別連載】「全部受けてほしい」授業合わせた練習相手、相方だけが知る「2人の時間」

2024年10月28日 08:00

野球

【中日1位金丸・特別連載】「全部受けてほしい」授業合わせた練習相手、相方だけが知る「2人の時間」
金丸のキャッチボール相手を務めた関大・眞銅和馬。金丸の要望でキャッチャーミットも変更しなかった Photo By スポニチ
 ドラフト1位で中日が交渉権を獲得した関大・金丸夢斗投手(4年)の足跡を振り返る特別連載。最終回は関大で出会った「相方」との物語――。
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 夢斗をはじめ、指導者、同僚までが「金丸夢斗のベスト投球」と口をそろえる一戦がある。それは、優勝争いがし烈を極めていた3年秋、立命大との3回戦だ。1―1の9回裏無死満塁から2者連続空振り三振を奪うなど無失点で切り抜け、10回1失点完投でリーグ優勝につながる劇的な1勝を挙げた。

 立命大戦前日のこと。普段は投手とキャッチボールを行っているにも関わらず、この日だけ同学年捕手の眞銅和馬と組んでいた。つまり、自身のベスト投球の前日の球筋を知る相手が眞銅だった。さらに投球動作の確認事項も多く、キャッチボールだけで1時間を超えるだけに、受け手を投手から野手に変更すべきではないかと考えていたところだった。

 そこで夢斗は眞銅にお願いした。「これから卒業まで全部のキャッチボールを受けてくれへん? 常に違いを見て、変化があれば全部伝えてほしい」。そこから現在に至るまで、2人で授業時間を合わせるなど工夫して、キャッチボール相手を眞銅一人に固定した。

 眞銅は毎日投球を受けることで、些細な変化に気が付いた。「良いときと悪いときでは、右足を上げたときの立ち姿が違う」。腹に力が入っているか、右肩の角度が一塁側に入りすぎていないか――。約束通り、気付いたことは全て伝えた。

 4年春に夢斗が腰を痛めたときも「今日は球の縫い目が見えすぎている…」とすぐに分かった。2人で「そろそろやばいな…」と不安を抱きながらリーグ戦を戦ったものの、痛みが限界を超えて5月中旬に離脱。リハビリ期間、軽めのキャッチボールでさえも全て眞銅が受けて見守った。

 眞銅は、リーグ戦出場が4年秋の1打席のみと出場機会に恵まれなかった。夢斗とバッテリーを組むことはかなわず、「なんで僕がキャッチボール相手なんですかね?詳しく聞いたことはないですけど」と首をかしげる。ただし、夢斗には確固たる理由があった。「周りに意見することができる眞銅なら、必ず考えを伝えてくれると思いました」。一方の眞銅は「金丸は取材がどれだけ長引いても、やろうとしていた練習は必ず終わらせてから帰るんです。絶対に直接は言えないですけど、凄いと思います」と言う。互いに尊敬の思いは胸に秘めてきた。

 眞銅は大学で野球を引退し、金融関係の企業に就職する予定だ。海外赴任がある仕事とあって、「いつか2人で一緒に仕事できたら、おもろいな」と夢を語り合ったこともある。1年間続いた2人でのキャッチボール。今秋ドラフト会議で4球団から1位指名を受けた裏には、陰ながら支えた相方の存在があった。(河合 洋介)

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