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【生島ヒロシ オヤジの処方箋】脳梗塞は汗かく夏に多い
2019年07月10日 12:00
社会
脳梗塞は脳卒中の一種。脳卒中って冬の病気と思いがちですよね。私もそうでした。でも脳梗塞に限ってみると、夏の方が多いんです。ここに国立循環器病研究センターが2008年から10年にかけてとったデータがあります。センターに入院した患者数は冬(12~2月)369人に対して、夏(6~8月)が386人。驚きましたね。
母親が脳梗塞でした。私はどちらかといえば母親の体質を継いでいるので、常日頃から注意してるんです。TBSのラジオのスタジオにも血圧計を置いていて本番前後にチェック。実はスタッフの中に私が「血圧計クラッシャー」と呼んでいる60代半ばの男性がいて、上が160で下が130。彼はサーファーでメタボとも無縁。そう、見た目じゃないんですよ。高血圧は脳梗塞と深い関係がありますから、痩せてるからって安心してはいけません。
【原因】脳梗塞は脳卒中の中で、血管が詰まって発生する病気です。詰まり方によって種類が分かれています。血管が詰まりやすくなる動脈硬化につながる高血圧、高脂血症、糖尿病、肥満などの生活習慣病が原因となります。高齢者には、元々動脈硬化の傾向があるので下地があります。あとは心臓でできる血栓。脳まで運ばれ血管をふさぐのです。
【検査】一刻を争う病気なので、検査より治療が優先になります。まずは頭部CT(コンピューター断層撮影)。画像では血管が詰まった部分は黒く、出血した部分は白く見えます。黒い部分があれば、さらに脳MRI(磁気共鳴画像装置)検査。白い部分があれば手術が検討されます。また脳ドックでは画像検査で自覚症状のない血管の詰まりが発見できるので、定期的に通うのがいいですね。
【治療】脳梗塞は緊急の場合を除いては点滴、内服薬で血液の流れをよくしていきます。現在、発症から4時間半以内ならば血栓を溶かす「アルテプラーゼ」という薬が使えます。カテーテルを使って狭くなった血管を広げるなど外科手術を行うこともあります。
【予防法】意識がボーッとして、頭も痛いし…。これって脳梗塞?それとも、ただの寝不足?とにかく一刻を争う病気なんですから、悠長なこと言ってられないんです。そこで「FAST(ファスト)」です。これは米国脳卒中協会が推奨している、脳梗塞を含む脳卒中の警告ガイド。私が頼っている脳神経外科の眞田クリニック(東京都大田区)の眞田祥一院長も「一般の人が判断するには有効」と話しています。
FASTはそれぞれ、顔、腕、言葉、時間の英単語の頭文字。顔の片側がゆがんでる、片方の腕に力が入らない、ろれつが回らず簡単な言葉が出てこない。どれか一つでもあれば脳梗塞の危険。そこからは時間勝負。病院へ急行です。FASTは英語で「急ぐ」の意味。「FAST」、頭に入れておきましょう。
夏の脳梗塞は次のような流れが考えられます。汗をかいて脱水状態になる→血液中の水分が減る→血液の流れが悪くなる→血小板が小さなかたまりを作り始める→周囲にある赤血球や白血球も取り込んでかたまりが大きくなる→脳梗塞を発症。
では、どうすればいいか。水分の補給です。特に注意が必要なのは寝ている間。高齢者の脳梗塞の発症時間帯は睡眠中、朝起きてからの割合が高いというデータがあります。脳梗塞予防に限らず「寝る前にコップ1杯の水を飲むのがいい」と言われますが、眞田先生も勧めます。さらに枕元にペットボトルを1本置いておくと、なおいいんですって。「何かおかしいなと思ったら、まず水を飲む」ということです。
高齢者は若い人に比べて体内の水分量が少ないといいます。意識的に水分を取ることを心掛けましょう。
あと、血管の病気ですからね。血管を強くすることも大事です。血管の老化を防ぐにはビタミンEを含む食べ物がいいですね。眞田先生は特にゴマ、クルミ、小魚・青魚を薦めます。これからの季節、ゴマやクルミは冷やし中華のタレに使ったらいいんじゃないですか。
眞田先生のお話であとひとつ“いまどきなこと”がありました。「スマホがいつものようにいじれなくなったら注意したほうがいい」。う~ん、これなら一日何回でもチェックできますね。FASTと一緒に気に留めておきましょう。とにかく異変を感じたらアクト・ファスト(即行動)ですよ!!
◆生島 ヒロシ(いくしま・ひろし)1950年(昭25)12月24日生まれ、宮城県出身の68歳。米カリフォルニア州立大ロングビーチ校ジャーナリズム科卒業後、76年にTBS入社。89年に退社し、生島企画室を設立。TBSラジオ「生島ヒロシのおはよう定食・一直線」(月~金曜前5・00)は、98年から続く長寿番組。名物コーナー「教えてドクター!病気が逃げてく健康習慣」に登場する名医たちとの親交から、芸能界きっての健康通。