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【私の山歩き】宍戸開 山を極められる雪山の冒険
2015年06月26日 05:30
社会
スキー板を担ぐと、普通の歩幅より小股で歩かなきゃいけない。当然ながら速くは歩けないんだけど、これが疲れない歩き方のコツ。腰で歩くと言うのかな。頭を上下しないで、すり足で前に進む。持ち物を最小限にする方法とか、登山の「いろは」はスキーを通じて学んだね。
初めて本格的なトレッキングに挑戦したのはヒマラヤ。ネーチャー番組のロケで約6000メートルまで登って、2週間ほどキャンプを張った。もちろん大変だったよ。ひとたび風が吹くとテントは飛ばされそうになるし、雨もハンパない量が降ってくる。
それより怖いのがヒル。どんなに狭くても繊維の隙間さえあれば入ってくるから、テントの中で運動靴を履いててもかまれちゃう。靴を脱いだら3、4カ所かまれてたこともあったよ。ヒルをつぶすと血が飛び散っちゃうから、凄くショッキングに感じるんだよね。
最近はカメラを持って山に行くことが増えたかな。特に雪山の風景写真を撮るのが好きでね。ヨーロッパアルプスのゴルナーグラートからの写真を見てもらうと分かる通り、雪景色ってカラーでも白黒っぽくなるんだけど、その陰影だけで飛び出す絵本のような立体感が表現される。そこに人間の力を超えた生命力を感じるんだよね。
大自然を目の前にすると固定観念なんか吹っ飛んじゃうよ。自然、風景、大地に触れれば触れるほど怒りが湧かなくなる。人間の奥行きが深くなるのかな。全てを包み込むハートを持てるような気がする。
それを手っ取り早く味わえるのが登山なんだろうね。でも「冒険」を体感するなら雪山を歩くことだよ。道があるところを歩くなら、人が進んだ後をなぞっているだけ。雪山はどこが崩れやすいか、どこを登ればいいか分からない。それこそが本当の山登り、山を極めるということじゃないかな。
≪「ナイフと箸」が必需品≫持って行くことを勧める登山グッズには「ナイフと箸」を挙げた。「箸は食べる時だけでなく、ヒモをほどいたりするのにも使える。ナイフもほつれた糸を切ったり、さまざまな場面で利用できるから」と説明。「コップにもなるような深めの皿もあるといいかな」と付け加えた。一方、持っていかないでと訴えるのがシャンプーと石けん。「化学物質をばらまいちゃいけない。山ではみんな汚くていいんだから」と話した。
◆宍戸 開(ししど・かい)1966年(昭41)9月4日、東京都生まれ。俳優宍戸錠の長男。デビュー作の映画「マイフェニックス」で日本アカデミー賞新人賞を受賞。10年12月に一般女性と結婚した。五影(いつかげ)開の名義で写真家としても活動している。