【鶏胸肉100gのカロリー&タンパク質】皮あり・皮なしの違い。効果的な食べ方とは[管理栄養士監修]
2023年07月27日 09:00
筋トレやダイエットなど、ボディメイクをがんばる人がヘビロテしているであろう食材「鶏むね肉」。安いし、たんぱく質が多い食べ物だからと何気なく食べていませんか? 思っている以上に栄養素が豊富で、さまざまなレシピにも活用しやすい食材なのです。
鶏むね肉をもっと好きになる栄養マメ知識をお届けするとともに、「鶏むね肉は硬い、パサパサしてるから好きじゃない」という人にも、お肉を柔らかくする簡単ポイントなどを、管理栄養士の三城円先生から教えてもらいました。
鶏胸肉100gあたりのカロリー(皮あり・皮なし)
「皮あり」のカロリー
鶏胸肉(若鶏・生)の皮ありの100gあたりエネルギー量は、133kcalです。
「皮なし」のカロリー
鶏胸肉(若鶏・生)皮なしの100gあたりエネルギー量は、105kcalです。
皮ありの鶏胸肉と、28kcalの差があります。
皮だけでどうしてこんなに差が出るの?
鶏の皮には、脂質が多く含まれているからです。
皮つきの鶏むね肉の脂質は5.9gに対して、皮なしの鶏むね肉の脂質は1.9gと大きく差があります。糖質とたんぱく質は1gあたり4kcalのエネルギー量、脂質は1gあたり9kcalですので、脂質の量が多い皮つきはエネルギーも大きくなります。
鶏胸肉100gあたりのタンパク質量(皮あり・皮なし)
「皮あり」のタンパク質量
鶏胸肉(若鶏・生)の皮ありの100gあたりのタンパク質量は、21.3gです。
「皮なし」のタンパク質量
鶏胸肉(若鶏・生)皮なしの100gあたりのタンパク質量は、23.3gです。
鶏胸肉100gあたりの栄養価表
若鶏胸肉(生)
皮あり | 皮なし | |
エネルギー | 133kcal | 105kcal |
たんぱく質 | 21.3g | 23.3g |
脂質 | 5.9g | 1.9g |
糖質 | 0.1g | 0.1g |
ビタミンA | 18μg | 9μg |
ビタミンB6 | 0.57mg | 0.64mg |
出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)
皮なしの方が低カロリーだし高タンパク……皮剝いだ方がいいの?
「『脂質が多い』と謙遜されがちな鶏の皮には、皮膚や粘膜の機能や、細胞の成長に関係するビタミンAが多く含まれています。ビタミンAが不足すると、肌の乾燥、胎児の奇形などにつながると言われています。美しい肌を保つ働きや筋細胞を維持向上するためには欠かせない栄養素です」(三城先生)
皮なしのほうが脂質が4gも低いので、つい徹底的に剥いでしまいやすいですが、鶏皮には鶏皮のメリットがあるのですね。
「たんぱく質の量は、皮を除いたぶん、皮なしのほうが多く含まれています。しかし上記の理由よりたんぱく質の量だけではなく、ビタミンAの補給にも皮も上手に取り入れましょう」(三城先生)
部分的にではなく、全体的な栄養バランスで見ることが大切。鶏むね肉のカロリーや栄養素の数値は以下の通りです。
鶏むね肉に期待できるメリットとは
鶏むね肉は、ボディメイク中の人だけでなく、忙しい現代人にうれしいメリットが数多くあります。
「鶏むね肉には、疲労回復や運動のパフォーマンスを高める働きがあるイミダゾールジペプチドが豊富です。他の肉類に比べると消化が良いため、ストレスや暴飲暴食によって胃腸の疲れがあるときや、筋トレで内臓疲労を起こしているときの栄養補給にもピッタリです」(三城先生)
イミダゾールジペプチド。最近はおかず系プロテインバーなどでも見かける成分です。
「体内の酵素の働きを助ける補酵素として欠かせないビタミンB6も豊富です。これはエネルギー代謝をスムーズに促すため、ダイエットのときには欠かせません。また口の中や胃腸の表面を覆っている粘膜、肌の新陳代謝を助ける働きなどがあります。肌の細胞のもととなるたんぱく質と、その代謝を促すビタミンB6が一緒に摂れる鶏むね肉は、美と健康を助ける食材のひとつです」(三城先生)
鶏むね肉と鶏もも肉、ボディメイクにはどっちがおすすめ?
スーパーでは、鶏むね肉の隣によく並べられている「鶏もも肉」。唐揚げや煮物にぴったりの食材ですが、鶏むね肉と比べてどんな違いがあるのでしょうか。
「鶏むね肉はよく筋肉を動かす部分ですので、脂質が少なくエネルギーが低いこと、ビタミンB群のひとつでエネルギー代謝を助けるナイアシンが豊富です。一方、鶏もも肉はももの付け根の部位で胸肉と比べるとピンクがかっており、鉄やほどよく脂がのっています。エネルギーコントロールが必要なときや筋肉量を増やしたいときは鶏むね肉がオススメですが、加熱をすると硬くなりやすいのがネック。そのため、“森林どり”のように焼いたときに保水力が高いブランド鶏肉を選んだり、下処理や調理方法を工夫すると、ふっくらおいしく召し上がれます」(三城先生)
鶏もも肉には鉄も含まれているのですね! 鉄分不足になりやすい女性にとっては注目の情報です。
鶏むね肉、鶏もも肉ともに「どちらも優秀な食材で甲乙はつけられません。目的と料理環境、ほかのメニューとの組み合わせから選ぶといいと思います」と、三城先生は語ります。
鶏むね肉の効果的な食べ方。1日何回食べればいい?適量は?
ここからは、鶏むね肉を効果的に食べるためのハウツーを紹介。鶏むね肉を筋トレやダイエットにうまく活用するには、どんなことを意識するとよいでしょうか。
ダイエット中の場合
「まず、1日3食、鶏むね肉ばかり食べるというような極端なダイエット方法はおすすめしません。なぜなら、食材ひとつで『必要な栄養素が全部摂れる』ものはないからです」(三城先生)
いきなりドキッ。サラダチキンダイエット、大ブームになりましたものね。単品食いはNGです。それとは別に、栄養バランスを意識しつつ鶏むね肉をとり入れているストイックな人もいるかと思いますが、1日の適量などはあるのでしょうか。
「1日1~1.5食に鶏むね肉を取り入れるとよいでしょう。ひとりひとり必要な栄養素の量が異なるため一概には言えませんが、一般の方の場合、1日に摂りたいたんぱく質量の目安は、0.9~1.0g×体重(kg)です」(三城先生)
自身の体重分のたんぱく質量は必要、と覚えておくとよいですね。
「たとえば、体重60㎏の場合、1日に摂りたいたんぱく質の量は54~60gです。これを3食で摂ると考えると、1食あたり約20g。鶏むね肉(皮あり・100g中)には21.3gのたんぱく質が含まれていますので、1食で100g程度食べれば満たせる計算になります。体が小さい女性は、1.5食に分けたほうがよいでしょう。1日1~1.5食、鶏むね肉を100g前後とり入れるとよいと思います」(三城先生)
コンビニなどで見かける一般的なサラダチキンは100g前後です。そういえば、市販のサラダチキンと自作サラダチキンの場合、栄養素などに違いはあるのでしょうか。
「市販のサラダチキンも鶏むね肉を使ったものが多く、たんぱく質の量は大きな違いはありません。市販のものは、流通の過程で温度変化が起こりやすいことや日持ちをさせるために添加物が使われています(添加物を否定するものではありません)。また、そのまま食べられるために味をつけているものが多く、食塩が含まれています。自作の場合、味付けの調整が可能なことがメリットですが、添加物を使わないため日持ちがしません。またしっかり中まで火を通せていないと食中毒の危険性があります。用途に合わせて市販のもの、手作りのものを使い分けしましょう」(三城先生)
かたまりのまま調理すると内部のほうが少し生焼けになりやすいので、必ず中まで火が通っているか確認してからいただきましょう。
筋トレ中の場合
筋トレの場合も、ダイエット時と同様、鶏むね肉は1日100gが目安とのこと。なお、ハードなトレーニングをされている場合、エネルギー量を増やし、それに応じてたんぱく質の量(割合)を増やす必要があるといいます。
「トレーニングの内容と量によって幅がありますが、高強度のトレーニングをされている方の場合、たんぱく質1.2~2.0g×体重(㎏)を摂るとよいと思います」(三城先生)
筋肉を効率よく増やしたいときの3つのポイント
とはいえ、たんぱく質だけ重視しても筋肉はうまく作られません。筋肉を増やすためには、3つのポイントがあるといいます。
「『筋肉を増やす=たんぱく質の量』と思われがちですが、実はそうではありません。筋肉を増やすためには、『エネルギーをしっかり摂る』『たんぱく質を3食摂る』『ビタミン、ミネラルといった微量栄養素と腸内環境を整える働きがある食物繊維を摂る』という3点がセットになって成り立ちます」(三城先生)
この3ポイントについて、くわしく説明していきます。
エネルギーをしっかり摂る
「普通の生活強度の人の場合、1日に必要なエネルギー摂取量は30~40kcal×標準体重(㎏)です。60㎏の人の場合、1800~2,400kcal/日のエネルギー量が必要です。筋トレやトレーニング内容によってもっと必要な方もいらっしゃるでしょう。エネルギー不足が起こると、筋肉細胞を分解してエネルギー源にしてしまうため、がんばってトレーニングしているにも関わらずなかなか筋肉がつきません。糖質制限をしている筋トレユーザーの場合、筋細胞の脱水により筋繊維が切れる(いわゆる肉離れ)などのケガ、重りを持ったときの集中力低下による怪我などリスクがあります」(三城先生)
お腹が減りすぎて力が出ないという経験は、トレーニー以外の人でも経験があるのでは。ダイエットで極端な食事制限をしていたり、食べないダイエットを行っていると、トレーニングもままなりません。適度な糖質はむしろマストでしょう。
「体内で早く使われるエネルギーは、ごはんや麺、パンなどに多く含まれる糖質です。摂りすぎは中性脂肪になりますが、適量であればエネルギーとして体と脳で使われるため太ることはありません。まずはご自身に必要なエネルギー量を計算してみましょう」(三城先生)
たんぱく質を3食摂る
適切なエネルギーを摂ったら、いよいよたんぱく質です。
「必要なエネルギー量が満たされている前提で、たんぱく質を補います。1日のたんぱく質摂取量は先に説明した通りです。たんぱく質源には動物性と植物性があり、肉類や魚介類、卵、乳製品など動物性たんぱく質には、ビタミンやミネラルも多く含まれています。豆類や穀類、野菜など植物性たんぱく質には、食物繊維が多く含まれています」(三城先生)
たんぱく質は、魚やたまご、乳製品に豆類などからもとれるので、鶏むね肉だけでなくさまざまな食品も視野に入れてみましょう。
ビタミン、ミネラルといった微量栄養素と、食物繊維を摂る
「ビタミン、ミネラルと聞くと『野菜を食べなきゃ』と思われるかもしれません。しかし先述の通り、たんぱく質を多く含む食材にビタミン、ミネラルも多く含まれています。野菜や果物はそれらの栄養素だけではなく、食物繊維やフィトケミカルを補給するために、積極的に食べたい食材です」(三城先生)
食物繊維は第6の栄養素とも呼ばれており、腸内環境を整えることによるさまざまなメリットが注目されています。
「食物繊維は腸内細菌の餌になり、腸内環境を整える働きがあります。筋トレやランニングなど激しいトレーニングを行うと内臓が疲労し、腸内環境が乱れることが知られています。海藻に多い水溶性食物繊維と野菜に多い不溶性食物繊維を、1週間の食事の中でちりばめながら取り入れていきましょう。ハードトレーニングで疲れているときは、サラダよりもスープや煮物などやわらかい料理から摂ると、胃腸にやさしく体のケアにつながります」(三城先生)
筋肉を増やすためには、これら3つのポイントを押さえたうえで、トレーニングを行うのが効率的です。
「栄養素はチームプレーです。野球は9人で1チームですが、ピッチャーばかりたくさんいても試合は成り立ちません。これは栄養素と質のいい体づくりでも同様です。『筋肉=たんぱく質』という考えは一度捨て、エネルギー摂取、たんぱく質を分食して摂る、体内を調整するビタミン、ミネラル、食物繊維を摂ることで筋肉の量と質を高めていこうという考え方がおすすめです」(三城先生)
ちなみに「食べる前にスマホで写真を撮る」を行うと、自己管理にとても役立つそうです。
鶏むね肉の効果的な食べ方。栄養素を無駄なくとるコツとは
必要なたんぱく質量や、効率の良いとり方を学んだところで、鶏むね肉のおすすめの食べ方について聞いてみました。
「鶏むね肉は、淡泊な味わいながら旨味成分が多く含まれています。鶏ハムは栄養価も旨味もぎゅっと包み込めるのでおすすめです。鶏ハムを使ったサンドウィッチや野菜と合わせてパパっとおかずにすると、たんぱく質の摂取はもちろん他の栄養素も一緒に摂ることができます。またみそ汁やスープも、野菜やきのことともに食べやすいことはもちろん、鶏むね肉の栄養素を逃さず摂ることができます。汁もので胸肉を使う際は、そぎ切りにして最後に加えて蓋をし、予熱で10分ほど蒸らしながらじっくり火を通すと、ふっくらやわらかく召し上がれます」(三城先生)
ここで、鶏むね肉をおいしく食べる調理法について教えてもらいました。硬くなりやすいむね肉ですが、柔らかくする簡単な方法があります。
- フォークや包丁で穴をあけ、加熱時間を短くする
- そぎ切りして筋繊維を断ち切り、加熱で筋肉が縮むのを防ぐ
- 塩麹やマヨネーズ、ヨーグルトなどに漬け込む
- 刻んだ舞茸に漬け込んだり、舞茸と一緒に料理する
「肉に脂肪が少ないため、調理によって水分が出てパサつきを感じてしまいます。そのため加熱時間を短くし、水分を逃さないようにした処理をすることや筋繊維が縮むのを防ぐ、調味料や食材につけてたんぱく質を分解するなどの方法があります」(三城先生)
お肉は柔らかくできても、商品によっては特有の臭みを感じることもあります。これについても有効な方法があります。
「臭みはドリップと脂肪の酸化によって感じます。塩を振って10分ほどおき、出た水分をキッチンペーパーでふき取ってみてください。また酒を振って10分ほど置くだけでも臭みが取れます。生姜やにんにくなど、香りがある食材と一緒に料理をするという方法もあります」(三城先生)
ちなみに先述したブランド鶏肉は、臭みが少ないのが特長。とくに“森林どり”は食肉科学技術研究所で実施した検査で臭みが少ないと評価を受けているので、臭み抜きが面倒な人は選択肢のひとつにしてみては。
逆に太るかも⁉注意したい食べ方とは
ヘルシー食材である鶏むね肉ですが、食べ方によっては当然太ることもあります。とくに油を吸いやすい調理方法には要注意!
「唐揚げや炒め物との相性もよい鶏むね肉ですが、吸油率が高まると脂質量が増えます。唐揚げは週1回にする、炒め物の際はテフロンのフライパンを使い、油を使わない、または鶏ハムのように事前に加熱をしておき、最後にさっと加えるだけなど料理方法を工夫すると、いろいろなメニューで楽しめます」(三城先生)
唐揚げはつい食べ過ぎてしまいますものね……ちなみに鶏むね肉を食べ過ぎたときのデメリットは。
「鶏肉に限らず、たんぱく質は1日に0.9~1.0g×体重㎏の摂取量が目安です。鶏肉としての上限は決まっていませんが、たんぱく質が多い食事を続けると腸内環境が乱れ、便秘やおならが臭くなるなどが考えられます。また、たんぱく質を多く摂っても筋肉や細胞になるわけではなく、過剰分は中性脂肪になります。1食の献立でのバランスや1日、1週間でさまざまな食材を取り入れながら、鶏むね肉は1日1食ほど取り入れるとよいと思います。
鶏むね肉だけに頼るのではなく、魚や卵などいろいろな食品からもたんぱく質を摂取することで、効率のよい身体づくりに役立ちます。くれぐれも3食サラダチキンだけ、なんてメニューはNGですよ。
[教えてくれたのは]
三城円(さんじょう・まどか)
管理栄養士。日本パーソナル管理栄養士協会代表理事。自身のダイエット・摂食障害の経験から、ひとりで苦しんでいる人が多いことを知り“パーソナル管理栄養士”として独立。“食べながらやせる”を基本とし、ダイエット、アスリート、摂食障害で悩む方々、のべ 1万人以上の食事サポートを実施。現在は、パーソナル管理栄養士の全国ネットワークづくりも行っている。
<Text:編集部>
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