【内田雅也の追球】チャンピオンになるために佐藤輝に必要なのは自分ではなく「誰かのために」と考える姿勢

2023年08月18日 08:00

野球

【内田雅也の追球】チャンピオンになるために佐藤輝に必要なのは自分ではなく「誰かのために」と考える姿勢
<広・神>ベンチから戦況を見つめる佐藤輝(中)(撮影・岡田 丈靖) Photo By スポニチ
 【セ・リーグ   阪神0-6広島 ( 2023年8月17日    マツダ )】 白雨(はくう)と呼べるほどの激しい雨に見舞われ、4回裏に34分間の中断があった。記者席は雑談か空想の時間になる。米作家ロジャー・エンジェルに、試合中断の間、記者席の天井にクモが網を張り上げる光景を描いた作品がある。「見事な芸術品だ」と思いを巡らせる。
 阪神を思った。前夜の勝利で優勝へのマジックナンバー29を点灯させ、2位以下を引き離している。中断時点で0―5の劣勢で負け試合だ。雨が上がった後も試合は淡々と進み、零敗を喫した。進撃の合間、ひと息ついたような試合だった。

 この1敗には何ら痛痒(つうよう)を感じない。ただ、一つ気になったのは三塁手である。前夜同様に小野寺暖が守り、佐藤輝明はベンチに下げられている。

 外野手の小野寺は2軍で三塁手の経験があるとはいえ、1軍では前夜が初出場。守備はお世辞にもうまいとは言えない。2回裏に三遊間寄りのゴロをはじいた(記録は内野安打)。4回裏も同じく三遊間寄りのゴロを捕れず(失策)、失点につながった。今後、重要な試合で守らせるわけにはいかないだろう。

 佐藤輝の奮起が待たれる。守備のミスに加え、打撃でもミスと言えるような失敗がある。さらに関係者の話を聞けば、プレー以外の姿勢も問題視しているようだ。

 「アレ」に向けて一丸となるべきシーズン終盤である。佐藤輝に必要なのは、自分ではなく「誰かのために」と考える姿勢ではないか。

 「チャンピオン」という言葉について<もともと勝者というより、守護者という意味で使われていました>と脳科学者・茂木健一郎が『緊張を味方につける脳科学』(河出新書)に書いている。

 イギリスのサッカー場で観客がクイーンの『伝説のチャンピオン』を歌う。「ウィー・アー・ザ・チャンピオンズ」は「オレたちは勝者だ」と勝ち誇っているのでなく、「オレたちは君の代わりに戦ってくるよ」と歌いかけているわけだ。

 <自分が応援を受け取る側だと考えるとプレッシャーになる><自分がチャンピオンとして人に力を与える側だと考えてみては>と、力を発揮する方法を示している。

 ファンのため、チームのためと考えることで、姿勢や態度も変わる。チャンピオンになろうとする今、全員に通じる考え方だろう。 =敬称略=
(編集委員)

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