将棋棋士・久保利明九段「結局は今。人生にも使えると」 5年前阪神・才木に贈った「前後際断」の揮毫

2023年10月17日 05:15

野球

将棋棋士・久保利明九段「結局は今。人生にも使えると」 5年前阪神・才木に贈った「前後際断」の揮毫
自筆した「前後際断」の揮毫を持つ久保利明九段 Photo By スポニチ
 【猛虎へのエール 久保利明九段】王将4期など将棋のタイトル獲得歴がある振り飛車党の第一人者・久保利明九段(48)は兵庫県加古川市で育った幼少期から両親の影響を受けて阪神ファンだった。今季も京セラドーム大阪での開幕戦を観戦。「85年の日本一がちょうど見始めた頃で、バース、掛布、岡田は当時のスター。バックスクリーン3連発も覚えています」。開幕戦、背番号44のユニホーム姿で始球式に登板したランディ・バース氏のスマホ画像は宝物になった。毎年4、5試合観戦してきた。
 今岡真訪コーチや安藤優也コーチ、OBで浪速(大阪)の遠山昭治監督とは食事にも行った。「(遠山氏に)江川さんの次くらいにカーブが曲がったので“ファミスタで使ってました”と伝えたら、笑ってもらえました」。そして、実家から近い神戸市出身の才木が2年目の18年5月の巨人戦でプロ初勝利。奇遇にも当日、本紙観戦記を担当し、一塁側アルプス席で観戦。才木が将棋ファンだと伝え聞き「前後際断」の揮毫(きごう)をお祝いに贈った。

 過ぎたことにこだわらず、これから起こるかどうかも分からないことに不安にならないように過去も未来も断ち切って、今できることに一生懸命取り組むという、禅を由来とする言葉だ。

 自身も00年度棋王戦、01年度と07年度王座戦、07年度王将戦と初のタイトル戦から4回連続羽生善治九段に屈した。金本知憲氏(本紙評論家)や広島・新井貴浩監督が通った鹿児島・最福寺で護摩行も受けた。メンタルコーチについて指導を仰ぎ、心理学の本も読んだ。そして「前後際断」に出合った。逆転満塁本塁打を浴びた投手も、大悪手を指し優勢をひっくり返された棋士も直後、次の一球、次の一手に立ち向かわなければならない。

 「下柳(剛)さんも同じ言葉をグローブに刺しゅうしたと記事で読んだ。対局中は雑念が浮かぶし、指した手を対局中に悔やむこともある。勝ちそう、負けそうとも惑うが、結局は今。人生にも使えると感じました」

 右肘手術から復活し、自己最多の8勝を挙げた才木の今季は励みになった。球場周辺は小学生の頃、アマチュア強豪が住んでいて練習将棋を指しに通った地でもあった。長くなりそうなポストシーズンも、甲子園へ足を運ぶつもりでいる。(筒崎 嘉一)

 ◇久保 利明(くぼ・としあき)1975年(昭和50)8月27日生まれ。兵庫県出身の48歳。淡路仁茂九段門下。長女は翔子女流2級という父娘棋士。タイトル獲得は王将4期、棋王3期。

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