【内田雅也の追球】「普段」重視の「練習常善」

2024年02月16日 08:00

野球

【内田雅也の追球】「普段」重視の「練習常善」
7日、具志川のブルペンで投げ込む鈴木(撮影・大森 寛明)
 阪神監督・岡田彰布はキャンプで選手たちの何をみているのかと言えば、それは「練習する姿勢、態度」だという。
 「普段、どんな姿勢で練習しているか。それが大事な時の結果にもつながってくる。オレはそう思うけどね」

 キャンプ休日だった15日、先の第3クールで行った紅白戦2試合を思い返した。岡田の言葉を思い出すと合点がいく。

 11日の紅白戦で本塁打が出たヨハン・ミエセスについては「1本って言うても、フリーバッティングはめちゃくちゃやんか」と素っ気なかった。「そんなもん。ホームランってそら、たまたま当たったんやろ」。ふだんの練習をみているからこそ、まぐれ当たりだと切り捨てたのである。

 一方で12日の紅白戦で3連続四球の無死満塁から遊ゴロ併殺打の間に失点。2回を1安打5四球1失点と乱調だった左腕・鈴木勇斗には「どうしても抑えたいという気持ちがな……。具志川(2軍)でやっていたからしょうがない」と思いやった。岡田自身が7日に2軍キャンプを視察した際、ブルペンで100球を超える熱投を評価していた。「あのボールを出せたらのう。まあ、まだまだチャンスはある」と励ましてもいた。

 結果だけではなく、練習での姿勢をみるというのは選手にとってもありがたいことだろう。

 早大出身の岡田にはその魂が宿っている気がする。早大初代監督で「学生野球の父」と呼ばれる飛田穂洲の精神である。

 「一球入魂」という言葉を生み出した人物である。その言葉のなかに「練習常善」がある。練習で手を抜かず、最善を尽くせという教えだ。

 著書『学生野球とはなにか』(恒文社)の『少年球児に与う』で<われらはその上、平素の練習をことに尊重している>と書いた。<野球試合は優勝旗の争奪のみが目的ではない><魂の鍛錬を唯一の目的>とした。

 古くさい精神野球と笑ってはいけない。プロ野球にあっても、目標はむろん勝利や優勝だとしても、それだけを目的にしていては、やがてむなしさに襲われる。昨年、リーグ優勝、日本一を達成した歓喜も一瞬のできごとだった。勝利や優勝にいたる日々の成長の過程、上達する練度のたのしみがあってこそ、歓喜は深まるのだろう。

 だから岡田は「普段」を重んじ、みているのだろう。 =敬称略= (編集委員)

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