【内田雅也の追球】「ユーミー」封じる虎のお家芸 1度練習しておけば本番で反応できる

2024年02月23日 08:00

野球

【内田雅也の追球】「ユーミー」封じる虎のお家芸 1度練習しておけば本番で反応できる
<阪神宜野座キャンプ>投内総合練習で、ファールゾーンに上がったフライをキャッチする植田(撮影・椎名 航) Photo By スポニチ
 1死一、三塁で一塁側ファウル地域にフライが上がる。一塁手、二塁手、右翼手が邪飛を追う。捕球と同時にタッチアップの一塁走者がスタート。この間に三塁走者が本塁へ突入する。接戦の終盤などで行われる。
 通称「ユーミー」と呼ぶ走塁である。「ユー・アンド・ミー」の略語らしい。「君と僕」、2人の走者で1点を奪いにいくという意味だろうか。

 阪神の宜野座キャンプで22日、この練習が行われた。走塁面よりも守備側に重点を置いている。

 ポイントは投手がカットマンになる点である。邪飛捕球地点と本塁を結ぶ線上でカットに入る。一走の挟撃、三走の本塁突入を防ぐためだ。阪神が古くから行う工夫、いわばお家芸である。

 多くは投手は本塁後方でバックアップに走る。ただし、邪飛の捕球は後ろ向きだったり、体勢が悪く、距離のある本塁への送球は難しい。投手カットが早く正確なのだ。

 思い出すのは1988(昭和63)年5月4日の巨人戦(東京ドーム)である。阪神が1―0で競り勝った試合だ。

 9回裏1死満塁で一塁後方へ邪飛が上がった。後ろ向きで捕球した二塁手・岡田彰布(現監督)―投手・中西清起―捕手・木戸克彦の中継プレーで本塁突入の三走・栄村忠広を刺し、併殺でゲームセットとなった。

 夜のTBS『ニュース23』で解説者・小林繁が語っていた。巨人6年、阪神5年の経験があるが「阪神では毎年キャンプで投手がカットに入る練習を繰り返した。巨人ではなかった練習だった」。当時監督の村山実もこの番組を観ており、翌日話題にしていた。

 反対に2008年4月5日の巨人戦(東京ドーム)で0―0の5回表無死一、三塁、邪飛で三走・鳥谷敬が生還、先制決勝点を奪った。右翼手・高橋由伸の捕球は左肩付近で悪く、中継に入ったのは一塁手・李承(火ヘンに華)(イ・スンヨプ)でまごつき悠々セーフだった。この時の監督は岡田だった。

 こうしてみていくと、年に1度、いや数年に1度あるかないかのプレーである。ただし、1度練習しておけば本番で反応できる。

 この日、メイン球場での「投内総合練習」に参加した投手は7人。新人の椎葉剛、2年目の門別啓人も参加していた。他の投手はサブグラウンドで練習しており、家芸が継承されていた。
 =敬称略=(編集委員)

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