ポニーリーグ
月間ポニーリーグ12月号 広澤理事長が描く子供たちの未来
2021年12月29日 05:30
野球
「大倉を応援してくれるスポンサーがあったので、共同でやりました。昨今の硬式グラブは値上がりしています。もちろん他の競技でもお金がかかるものはあるでしょうが、野球はスパイクとグラブとバットを持っておかなければならない。全てそろえると、10万円はくだりません。少しでも貧困を理由に野球をやめてほしくはなかった。所得制限は付けさせてもらいましたが、たくさんの子供たちにグラブをプレゼントすることができた。SSKさんにお願いをして、みんなに届けることができました」
――協会宛てへの御礼の手紙が多数届いたと聞いています。
「ありがたく読ませてもらっています。“まさか、本当にグラブをもらえるとは思っていませんでした”と。中には兄弟の方もいる。他にもチームの監督を通じて、たくさんのメッセージをいただきました」
――アクションを起こして、本当に良かったと思えるのでは?
「そうですね。協賛、思いに賛同してくれた企業もあったし、来年も続けようと」
――他リーグにない斬新な施策はまだあります。その一つが、協会の卒団生を対象にした「目指せNPB給付型支援金」。今回は2人が選ばれました。(※2)
「ポニーの卒業者に限定していますが、夢の続きをみてほしい。われわれも何か応援したい思いがありました。せめて、食べ物ぐらいは困らないような支援をしよう、と。ただ、今年に関しては方々まで通知が行き渡ってなかったところもあったので、来年以降はもっと手を挙げる人たちが出てくるかもしれませんね」
――ポニーリーグという一つの家族に見て取れる。
「われわれも小さな団体。多くのことはできないけれど、野球をして野球を覚える理念の中に、経済的なことで野球ができなくなるのはかわいそう。そういう人たちの手助けができればうれしい」
――2年目の運用となった球数制限についても、お聞かせください。
「他団体が追随してきています。ポニーとしてはまずイニング制限をもうけて、次はアメリカのエビデンスに基づいて“これなら日本の中学生も大丈夫だろう”というものをつくりました。子供たちを守るためのもので、高校へ無事に送り出すのがわれわれの役目です。監督はみんな勝ちたいし、それは当然の心情だと思いますが、そこに球数制限を設けたことで、監督、コーチの人たちにも納得してもらい導入した。だいぶ、指導者の方々に浸透してきたと感じます。あとはそこにお父さん、お母さんの負担を減らせるような取り組みをしていきたい」
――具体的には。
「ウグイス嬢や審判の2人制になってきます。ただ、そういう協力をやりたい親御さんも中にはいて、実際に自重してもらうケースもたくさんありました。やっぱり、したい人がして、したくない人はしないとなってくると収拾がつかなくなってしまうのでね」
――保護者の負担の大きさが野球離れの一因にもなっている。
「どのスポーツもそうだけど、なかなか協力できない方が多いのもまた事実。やりたい人もあえてやめてもらうことで、極力、援助を使わないでいようとするのがポニーの考え」
――審判2人制について。
「保護者の審判を導入しないとなれば、審判の数はおのずと少なくなってきますからね。一塁線、三塁線の微妙な打球であったり、キャッチした、しないという際どいプレーも当然出てきます。悪意のない誤審が一生のキズになってしまう可能性もある中、本当は3、4人にお願いしたいのが心情です。そこで大会の準々決勝とかステージが上がってくれば、審判の数は増やすことは考えています」
――最後に来季に向けた意気込みを。
「ポニーの理念も大事ですが、コロナ次第の部分もあります。というのはポニーはアジア大会、世界大会(※3)と続いていくし、それが醍醐味(だいごみ)。現状ではなかなか不透明な部分があるけれど、準備だけはしっかりしておきたい。アメリカへ行って勝負するという前提に立って準備をしたい。まだ言えないけど、ポニーらしいアイデアはたくさん練っています。野球界初の試みもあるので、楽しみにしておいてほしいですね」
※1 株式会社大倉による「ポニーファミリー サプライ用品給付制度」。協賛社であるSSK社の野球用品引換券が贈呈され、スパイク、グラブが給付される。
※2 第1期受給者は沖縄ダイヤモンドベースボール倶楽部OBの上原敦己内野手と、市川ポニーOBの井上海音内野手。
※3 20、21年は新型コロナウイルス感染拡大のため、国際大会は中止。恒例だった日米間のホームステイ制度も見送られた。