磯村勇斗 「不適切にもほどがある!」ムッチ先輩×真彦で話題 人ってなんですか…心揺さぶる表と裏

2024年03月17日 05:00

芸能

磯村勇斗 「不適切にもほどがある!」ムッチ先輩×真彦で話題 人ってなんですか…心揺さぶる表と裏
磯村勇斗(撮影・村上 大輔) Photo By 提供写真
 【俺の顔】TBSドラマ「不適切にもほどがある!」のムッチ先輩役で注目を集める俳優の磯村勇斗(31)。コミカルな演技が話題だが、実は変幻自在の実力派。目に宿す光の加減で役を演じ分ける。愁いある瞳に孤独や狂気、慈愛を重ね、全く違う人物として姿を現す。「僕を世界とつなげてくれたのは、映画」。俳優11年目を迎えた今年を「第2ステージ」と捉える磯村が見据える先は――。(西村 綾乃)
 「僕の顔で特徴的なのは、ほくろ」。よく見ると、大小のほくろがある。自身の“推し”は、右頬の3つ。「ほくろ同士を線で結ぶと、夏の大三角形みたいでしょ」と笑い、指でなぞってみせた。

 静岡県沼津市出身。8歳上の兄や母とは似ていないが、目元は父親似。「若い時の親父の写真を見ると、僕を見ているよう。肩幅が広い体形とかも似ているんです」。

 目元を受け継いだ父は、今の仕事につながる“種”を運んでくれた。それは、小学校低学年の時。初めて行った映画館で、現在にもつながる体験をした。

 「猿の惑星を見たんです。シリーズのどれかだと思うんですけど。見ていて、あれ?なんか変だぞって。動物園にいる猿は、果物を食べてキャーキャー言ってるだけなのに、映画に出てくる猿は道具を使っている。不思議だなって」

 エンターテインメントの面白さに目覚めるとともに「何かおかしい」という感覚は、社会の中にある“ズレ”を敏感に察知する気質へとつながった。

 「人には裏の顔がある」。その思いを脚本に込め、監督と主演を務めたのが、中学2年生で取り組んだ映画「ヌマヅの少女ハイジ」だ。スイスから転校してきた少女・クララは、医療の力で歩行できるまでに回復するが、学校内で孤立。故郷に帰ったクララを、磯村演じるハイジが迎えにいく物語は、学校内で大絶賛。その拍手は「俳優になる」という目標になった。

 高校時代に「沼津演劇研究所」の門を叩いた。演技のイロハを学び、大学進学と同時に上京。下積み時代、親切なふりをして近づいてきた人の悪意に傷ついたこともあったが、善も悪も同居するのが人間。「それこそを、映画に映し出したい」と表現者としての指針になった。

 2014年に俳優デビュー。出演中のTBSドラマ「不適切にもほどがある!」(金曜後10・00)では、ツッパリのムッチ先輩と、その息子・真彦の2役を演じる。恋人を招き入れた自室で、突然白ブリーフ一枚になり、視聴者の度肝を抜いたが、超高齢化社会を描いた「PLAN 75」など社会の中にある「違和」と常に向き合ってきた。大量殺人犯を演じた「月」は、16年に神奈川県内で発生した障がい者殺傷事件が題材。「依頼を受けるか悩み、作品作りの中でも悩み、公開後も模倣犯が出たら」と葛藤した。劇中で口にした「人ってなんですか」という言葉は、今も考え続けている。

 今秋公開の主演作「若き見知らぬ者たち」は、介護や借金返済など家族の問題を背負う青年役。光のない沈んだまなざしが、凍ってしまった心を浮き彫りにしている。各作品で磯村が口にするせりふは、誰もが一度は感じたことがある気まずさなどを、あぶり出し、触れた人の心を揺さぶり続ける。

 「年を重ねて、しわが増えても、それも魅力の一つと言ってもらえるような役者になりたい」。そう語る今の夢は「地元で映画祭を開くこと」。国際映画祭で訪れたフランス・カンヌで見た海が、大好きな沼津の風景と重なったのだという。スクリーンの中で生きると決め、膨らんだつぼみは、今大輪の花を咲かせている。

 ≪スマホない昭和「今より楽しそう」≫「不適切にもほどがある!」の昭和パートでは、近藤真彦に憧れるツッパリ・ムッチ先輩を、令和パートでは、その息子・真彦の2役を演じている。自身は平成生まれで昭和を知らないが、周囲に様子を教わり役作りに生かした。「スマートフォンがない昔は、誰かと気軽に連絡が取れなくて不便だけど、会えた時の時間が濃いんじゃないかな。その時間は今よりも楽しそう」と印象を語った。

 ◇磯村 勇斗(いそむら・はやと)1992年(平4)9月11日生まれ、静岡県出身の31歳。21年の映画「劇場版 きのう何食べた?」などの演技が評価され「第45回日本アカデミー賞」で新人俳優賞を受賞。24年には同賞で助演男優賞を手にした。趣味はサウナ。地元・沼津の魅力を発信する「燦々ぬまづ大使」としても活動。

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