太田延長負け 初戦で北京決勝雪辱も世界1位に無念
2012年08月01日 06:00
五輪
14―14で迎えた延長戦。張り詰める1本勝負の中、カッサーラの出した剣が、太田の胸に突き刺さった。世界ランク1位の実力者相手に最後まで食らいつき、延長戦に持ち込む死闘を演じた。最後は力尽きたが、太田は「最高の夏にしたかった。もっと上で当たりたかった」と早すぎる終戦を悔やんだ。
10年世界選手権で銅メダルを獲得して以降は調子が下降線をたどった。昨年8月には肋骨を骨折するなど苦しみ、今年に入っても3月のW杯ドイツ大会、4月のW杯高円宮牌はともに無名選手に敗れて1回戦敗退していた。それでも「いい調整はできた。いい五輪になると信じてロンドンに入った」と手応えはつかんでいた。
北京五輪後にはフランスの古豪クラブで武者修行し、世界ランキングで日本勢初の1位まで上り詰めた。今回は連続メダルに挑戦したが、夢散。「相手の方が一枚上手だった。向こうも人生が懸かっているから」と苦笑いした。北京五輪では所属先がなく、「就職先募集中」と話し“ニート剣士”などと言われて注目を集めた。現在は就職先も決まり、日本フェンシング界の象徴に。人生は大きく変わったが、フェンシングで勝ちたい気持ちは変わらない。「北京よりも数倍きついことをしてきた」という顔は、少しだけ充実感が漂っていた。