元ラグビー日本代表・大八木氏スペシャル対談土田会長編 第4回 会長としての今後の取り組み
2023年09月08日 06:00
ラグビー
大八木 ここで改めて聞かせてください。22年6月にラグビー日本協会の会長就任に就任されました。その経緯を教えてください。
土田 15年に平尾(故人・誠二氏 16年10月20日に死去)と理事になりました。平尾が手伝ってくれと一緒に協会に入りました。平尾はトップリーグ(03年シーズンからスタートし21年シーズンまで)の強化を中心に、私は日本代表強化に軸を置きました。今のジェイミー・ジョセフ監督を決めたりしました。
“代表が勝つことが大事だ”と言っていた平尾が15年に病気(胆管細胞癌)になって。ちょうど日本代表が南アフリカに勝ったあたりですね。将来的には平尾が日本協会の会長に就くということを前提に私も理事を続けていました。その中で森重隆前会長(19年就任)がラグビー協会の規定である70歳定年を迎え、私が何人かの候補者の中から選ばれました。仕事をしているので最初は無理ですと断っていたのですが、ビジネスとラグビー、両方をやっていって欲しいということで引き受けました。
大八木 “二足のわらじ”を履いていますが、一番大変なのは何ですか。
土田 私の一番の仕事は、ラグビーワールドカップをもう一度、日本に持って来ることです。今、世界中をまわっています。8月もイタリアに行ったのですが、木曜日の夜に出発して、月曜日の朝、5時半に帰国して会社に行くという。このスケジュールがほとんどですね。7月も南アフリカに行ったのですが、ドバイまで12時間、そこから12時間かかりました。これがトシで寝られないんですよ。
大八木 そういう時は山崎(ウイスキー)を飲んで、グッと寝たらいいじゃないですか。
土田 ティア1(世界最上位グループ)が再編され、日本は5月にハイパフォーマンス・ユニオン(最上位11カ国 イングランド、アイルランド、スコットランド、ウェールズ、フランス、イタリア、ニュージーランド、南アフリカ、アルゼンチン、日本)に認められたので、試合が多く組めるようになりました。男子だけじゃなく女子、20歳以下もです。強豪国とテストマッチの契約をするため海外に行く仕事が多いですね。
大八木 日本ラグビーの現状はどうなのですか? 高校生のラグビー人口も減っています。公立高校はメンバーが揃わず合同チームとして試合に出場するケースが増えています。土田会長の個人的な改意見もいいですし、ラグビー協会全体でラグビー人気、ラグビー人口増加に向けての改革案はありますか。
土田 普及の部分が一番大切です。平尾とやった15年のワールドカップ、19年のワールドカップもそうですが、日本代表が活躍することで、子どもたちの競技人口も増えました。普及のためには、やっぱり代表強化が一番です。もちろん女子も7人制もですが。大八木さんが現役の頃は一年に1回、海外遠征できればいいか、テストマッチを行えればという時代でした。今は変わりました。
去年はフランス、ニュージーランドが来日してくれました。今年もオールブラックス・フィフティーン、サモア、トンガ、フィジー代表と、年間10試合くらい、いい試合が組めるようになりました。昨年、国立競技場で行ったオールブラックス戦は、観客が6万5000人以上(6万5118人)入りました。1試合で5、6億円を稼げます。そのお金を貯めるのでは普及に使うようにしています。
(ラグビー部のある)高校の数がどんどん減っています。部員数も減っています。大八木さんもそうですが、私たちの時代は高校からラグビーを始めたじゃないですか。このケースが極端に減っています。ラグビースクールから中学、高校と競技者がつながればいいのですが、現状はうまくいっていません。
19年のワールドカップ後からラグビースクールの競技人口はどんどん増えているのですが、ラグビー部のある中学が減っています。中学の競技人口を増やすために、中学の大会を増やし、そのまま強い高校ばかりに行かず、色々な高校に分かれて入学できるような環境をつくれないか思案しています。
これまで3人くらいだった普及育成の担当者を8人くらいに増やそうとも考えています。四国、島根、鳥取とかラグビースクールや中学のラグビー部が少ない地域に普及育成の担当者を派遣して何とか競技人口を増やす活動をしています。当然、時間はかかりますがね。
リーグワンのチームはどうしても都心部にあります。神戸、大阪、あとは東京に集まっています。そこにスクールやアカデミーを開設してもらい、中学までプレーしてもらえればいいのですが、それ以外の地域は協会が資金を提供して普及できる方法を考えています。
大八木 ラグビースクールやアカデミーの中学部でプレーをできるのか、入学した中学にラグビー部があって続けられるのか、大きな問題ですね。
土田 中学の部活が活発なのは大阪と京都くらいなんですよね。中体連にラグビーは入っていないので、スクールは対抗試合など、たくさん試合を組むことができます。高校はどうしても高体連の組織の中にあるので、そこに従ってやらなければいけないので、試合を増やしたりするのはなかなか難しいですね。
サッカーもバスケットボールも協会というよりは、Jリーグ、Bリーグとプロ組織がしっかり機能しています。リーグワンも玉塚元一理事長を先頭にしっかりとした組織を作り上げている段階です。
嬉しいことに日本代表が強くなったことで試合会場が満員になります。私たちの時代は日本代表が弱かったので、ファンは秩父宮ラグビー場のトイレでジャージーに着替えていることが多かったですよね。今は試合前に秩父宮ラグビー場周辺が日本代表のジャージー姿でいっぱいになります。
国立競技場で試合をしたら1人単価、1万円くらいです。サッカーよりチケットは高いんですよ。それでも多くのファンが観戦に来てくれるようになりました。そういう意味ではコアなファンが多いのですがね。課題としては新たなファンをもっと増やしていかないといけません。
大八木 では、リーグワンという組織が今後新たに取り組んでいこうとしていることを教えてください。
土田 リーグワンが中心となってアカデミーを運営したりします。神戸製鋼や東芝府中のように、早くからラグビースクールを開設しているとその地区のチームともめないのですが、地域によっては問題になることがあります。だったらアカデミーを作って、能力の高いコーチなどを就かせ、指導料などでしっかり収益をあげられる仕組みを作りたいと考えています。
サッカーもアカデミーの収入が多いのが現状です。鹿島の収益はかなり高いと聞いています。選手たちは引退後、誰もがトップチームの指導者になることは難しいじゃないですか。アカデミーがあれば、そこで指導することも可能になります。都心部はそういうプランを考えています。
大八木 「リーグワンのあり方が重要になりますね。
土田 島根、鳥取だと指導している学校が少ない。高校ラグビーの全国大会は今は1県1校の出場となっていますが、僕らの時代は秋田は山形と全国大会出場をかけた地区決定戦がありました。1県1校のスタイルが崩れてしまうと、ラグビー人口がどんどん減ってしまうと思います。40年前はスクールウォーズ(テレビドラマ)の影響で高校生のラグビー人口が一気に増えたこともありました。今のままでは7人制でもメンバーが足りなくなってしまいます。地方もオリンピック競技として7人制が採用されているうちは、7人制の大会などを開催できるように強化、発展させていきたいですね。
大八木 例えばフィギュアスケート選手の家族はスケートリンクが遠く離れていても子どもために必死に送迎しているじゃないですか。そんな感じで受け止めた方がいいのかなと思います。厳しい言い方かも知れないけど、ラグビーがしたいななら、入りたいチームのある地区、地域に家族で引っ越しするような環境にならないとダメだと思うんですよ。地方の活性化も大切ですけど、それに貴重な強化予算を使うのはもったいないと思います。簡単には理解できないことだとは思いますが。
◇土田 雅人(つちだ・まさと)1962年(昭37)10月21日生まれ、秋田県秋田市出身の60歳。秋田工からラグビーを始め、同志社大―サントリー。同志社大時代は大学選手権3連覇に貢献、サントリー監督として日本選手権優勝。97年から99年まで日本代表フォワードコーチ。22年から日本ラグビーフットボール協会会長。現役時代のポジションはナンバー8。日本代表キャップ1。
◇大八木 淳史(おおやぎ・あつし)1961年(昭36)8月15日、京都市生まれの62歳。伏見工からラグビーを始め、同志社大―神戸製鋼。同志社大時代は大学選手権3連覇、神戸製鋼時代は日本選手権7連覇に貢献。現役時代のポジションはロック。日本代表キャップ30。
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