どうなる大谷、TJ手術執刀経験者・馬見塚氏が考える治療法 手術か保存療法か 未来を見据えた挑戦に

2023年09月06日 02:30

野球

どうなる大谷、TJ手術執刀経験者・馬見塚氏が考える治療法 手術か保存療法か 未来を見据えた挑戦に
<エンゼルス・オリオールズ>打撃練習を切り上げベンチに戻る大谷(撮影・光山 貴大) Photo By スポニチ
 右肘じん帯損傷で今季中の登板が消滅したエンゼルスの大谷翔平投手(29)の今後はいかに――。これまで100例以上のじん帯再建手術(通称トミー・ジョン手術)の執刀経験がある「ベースボール&スポーツクリニック」の馬見塚(まみづか)尚孝理事長(55)に現状や今後の見通しを聞いた。(取材・柳原 直之)
 大谷選手の代理人を務めるネズ・バレロ氏は会見によれば、右肘のじん帯は断裂しておらず、軽症を強調している。一方、来季の開幕は打者で臨むことを明言した。“軽症だけど5~7年先の未来を考え、手術をして完璧な状態に戻して二刀流をやり続けよう”というメッセージを感じ取れた。

 損傷箇所について、バレロ氏は「前回は上で今回は一番下。骨に近いじん帯の最下端に問題がある」と語った。PRP(多血小板血しょう)注射による保存療法の報告では、上部の方が治療成績が良い。上部の方が内側上顆(じょうか、肘の内側の骨)との接触面が多く、安定する確率が高いからだ。一般的に下部の方が、保存療法の成績が良くない。

 手術となれば、(1)人工のじん帯を入れてより強化する「インターナル・ブレース」、(2)自身の腱を移植するトミー・ジョン手術、(3)自身の腱と「インターナル・ブレース」を同時に移植するハイブリッド手術、の3通りが考えられる。

 (1)は膝の前十字じん帯の手術でも採用されるが、異物反応を引き起こすことがあり、違和感が生まれやすいリスクがある。再び100マイル(約161キロ)の剛速球を投げられるようになるため(2)ではなく(3)を選ぶケースが考えられるが、症例や実績はまだ少ない。2度目のトミー・ジョン手術は難易度は2倍以上になる。

(2)と(3)は全治まで1年半~2年で、二刀流として25年シーズンの開幕戦には間に合う。一方で同年のオープン戦の登板は難しく、投球フォームの微調整も考えられるため、簡単ではない挑戦となるだろう。(ベースボール&スポーツクリニック理事長、東工大野球部コーチ)

 ▽想定される大谷の主な治療方法

 (1)インターナル・ブレース 繊維状の補強材を損傷したじん帯内部に通して移植する術式。トミー・ジョン手術に比べて復帰時期が約半年と短いが、症例はまだ少ない。

 (2)トミー・ジョン手術 自身の別の部位の腱を移植して損傷したじん帯を再建する。大谷は18年10月に受けた。通常全治は1年2カ月以上で、2度目の手術では成功率が下がりリハビリ期間も長くなるとされる。

 (3)ハイブリッド手術 (1)と(2)の手術を同時に行うことからそう呼ばれる。21年9月にツインズ・前田が受け、23年開幕から復帰した。

 (4)PRP注射 自身の血液を採取し組織を再生させる血小板の密度を濃くして患部に注射する保存療法。大谷は18年6月に受け、14年には右肘じん帯損傷のヤンキース・田中将も同療法でシーズン中に復帰した。

 ▽大谷の18年トミー・ジョン手術後の経緯

 ☆18年6月6日 ロイヤルズ戦で右肘じん帯を損傷し降板。7日にPRP注射と幹細胞注射を受ける。

 ☆7月3日 マリナーズ戦で打者で復帰。

 ☆9月2日 アストロズ戦で88日ぶり投手で復帰も、降板後に右肘に新たな損傷が判明。

 ☆10月1日 シーズン終了翌日、トミー・ジョン手術を受ける。

 ☆19年5月7日 タイガース戦で術後218日目で打者出場。

 ☆20年7月26日 コロナ禍による開幕延期もあり手術から約1年10カ月経てアスレチックス戦に登板。

 ☆8月2日 2度目の登板で右前腕の屈筋内筋群の損傷が判明し残りシーズンは打者専念。

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