日本ハム・万波 飛躍の裏にあったキャンプ初日の「納得の3タコ」

2023年10月10日 08:00

野球

日本ハム・万波 飛躍の裏にあったキャンプ初日の「納得の3タコ」
日本ハムの万波 Photo By スポニチ
 あの時、目先の結果を欲しがっていれば今年の活躍はなかったかもしれない。高卒5年目の今季、25本塁打と躍進を見せた日本ハム・万波中正外野手(23)のことだ。「あの時にブレたり、気持ちが揺れなかったのはすごい良かったのかなと思いますね」と振り返るのが、春季名護キャンプ初日の今年2月1日だった。
 就任2年目だった新庄監督は、キャンプ初日に紅白戦を実施した。内容によっては「バンと切る」と、即2軍降格も示唆。選手をふるいにかけると宣言していたのだ。当落選上の選手たちにとっては、今季を占う大事な一戦。オフは多くの選手たちが紅白戦に照準を合わせ、逆算してコンディション調整していたほどだった。

 もちろん、万波にとっても大事なアピールの場であることは違いなかった。結果は3打数無安打。だが試合後、「もちろん今の結果も欲しいが、一年かけて野球がうまくなる“取り組み”をオフからやってきたので。今はあまり目先のことにとらわれてブレたくはない」と、語っていた信念ある言葉が印象的だった。

 理由があった。万波は昨オフに単身渡米し、動作解析を実施。数値化して欠点を洗いざらい出すと、帰国後は打撃フォーム改良のため徹底的な反復練習で体に染みこませてきた。大事な初実戦でも「極端な話し、たとえここ(紅白戦)で打てなくて2軍落ちになったとしても納得できていた部分はあった」。目先の一本より、シーズンでの一本のために欲は捨てていた。

 実際にキャンプ2度目の紅白戦では、1打席目にバックスクリーン弾。その一発を皮切りにオープン戦16試合に出場し、打率・231、4本塁打と飛躍のシーズンへとつなげた。「正直、最初の紅白戦はレギュラー組ではなかった。それはすごく露骨に感じていた。そこでその場しのぎの打撃をするより、僕がレギュラーを獲るためには相当上回る必要があった」と、客観的にも見えていた。

 昨季はチーム2位タイの14本塁打を放つも、夏場に極度な不振に陥って2軍でシーズンを終了。「今までは1軍で何百打席立ったらもっとできるんじゃないかって、ふんわりとした希望があって…」と振り返る。しかし、314打席を与えられながら結果を出せず「そこで現実を突きつけられたのが転機だった」と、すぐに渡米の準備を進めた。

 必ずしも、新たな取り組みが好転するとは限らない。不安もあったが、日々向上するスイングスピード、体重、筋肉量などの数値が支えてくれた。「自分自身もしっかりやれているなと、納得できている部分もあったのだと思う。でなければダメだったことにあたふたしていたと思う。試合後、そういう(信念ある)コメントが出たということは、取り組みに対して迷いがなかったのもあると思いますね」。飛躍の背景には「納得の3タコ」があった。(記者コラム・清藤 駿太)

おすすめテーマ

2023年10月10日のニュース

特集

野球のランキング

【楽天】オススメアイテム