鳥越裕介氏 内川聖一にもらった指導者冥利に尽きるいい言葉 逃げなかったからこそ…

2023年10月10日 08:44

野球

鳥越裕介氏 内川聖一にもらった指導者冥利に尽きるいい言葉 逃げなかったからこそ…
西部版でコラムを連載中のプロ野球評論家の鳥越氏から花束を贈られ涙する内川 Photo By スポニチ
 【鳥越裕介のかぼす論】 9月24日、九州アジアリーグ・大分B―リングスに所属する内川聖一の引退試合。最後は私の地元・大分県臼杵市での試合だった。スケジュールの都合がついたのもあるが、これは行こうと思った。昨年10月3日も神宮球場での引退試合を観戦していた。内川が途中交代したのでセレモニーまでの間、外に食事に出たら村上の56号が出たのもよく、覚えている。早いものでもう1年が経った。血縁関係がないのにこの2試合とも見た人間はあまり、いないと思う。
 一番の思い出は2016年に外野からファーストにコンバートしたこと。外野の守備力が落ちていたのと、内川の将来を考えても一塁をやった方が選手寿命は長くなると考えた。チームリーダーとして期待するのならば、インフィールドに置いた方がいい。短い距離を投げるショートスローが苦手だったが、「大丈夫だ。俺に任せとけ」と背中を押した。もちろん、内川ならできるという根拠はあった。

 彼はチャレンジした。最初「ゴールデングラブを獲ろう」という目標設定をする。ショートスローは練習から成功例をつくるしかない。絶対、治る。ただ、今までの失敗例が多すぎるので恐怖感とは戦わなければいけなかった。最初、キャンプの特守ではキャッチボールからワンバウンドを投げた。ただ、自分のイメージしていた練習をやってもらうと、すぐに一塁から二塁へバシバシ、ストライク送球をした。「うそでしょ」「意味分からん」と本人も驚いたようだ。タイミングさえ合わせてあげれば絶対、大丈夫だと思っていた。このことで彼も私のことを信用したと思う。もちろん、内川が素直に取り組んだからこそ、できたことだ。

 私がロッテのヘッドコーチをしていた19年。一塁手のゴールデングラブ賞を獲った報告の電話があった。「逃げんでよかったな」と言ったら「トリさんじゃなければ、逃げていました」と返してきた。指導者冥利(みょうり)に尽きる、いい言葉をもらった。守備率10割のノーエラー。チームは別になったが、心底うれしかった。

 人より優れた打撃センスを持っているが、人より苦手なものもある。人間がうまいことできているものだとつくづく感じた。ただ、内川はお父さんが高校野球の監督をしていたというのもあるのか、守備に対する意識が高かった。一生懸命やるし、ボールから逃げない。上達をする資質はあったのだと思う。

 聖一、23年間お疲れさま。
(野球解説者)

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