実直でいちずで向上心の塊が生んだドジャース・由伸 元担当記者が明かす知られざる素顔

2023年12月29日 02:30

野球

実直でいちずで向上心の塊が生んだドジャース・由伸 元担当記者が明かす知られざる素顔
入団会見で笑顔を見せる山本(AP) Photo By AP
 知られざる山本由伸の素顔とは――。スポニチで16年秋~18年、20~22年にわたりオリックスを担当した湯澤涼記者(42)は、16年オフの入団時から取材を開始。ドジャース入団を決断するに至った2つの理由とともに、秘話を明かした。
 オリックスが25年ぶりにリーグ優勝した21年10月28日付紙面で、“実は19年オフに極秘渡米しメジャーを観戦していた”と書いた。本人が「内緒にしてください」と言うので球団名は伏せたが、それがド軍であり、ドジャースタジアムだった。

 取材した際、「一度、見ておこうと思って」と言った。コロナ禍前の熱気に包まれた球場、色鮮やかな天然芝、夢舞台に目を奪われた。近い将来、そのマウンドに自身が立つ姿をイメージしていたのだと思う。

 一度決めたことは絶対に曲げない。18年春季キャンプで、現在の投球フォームの原点となる大胆な改造に挑戦。球団内で不安視する声があちこちで上がり、首脳陣と膝をつき合わせてフォームを元に戻せと打診されたが、19歳の山本は譲らなかった。実直でいちずな山本だから、ド軍が最有力だと想像できた。

 もう一つの理由が、「勝つこと」。3年連続投手4冠、リーグ3連覇の立役者は勝利に貪欲だ。「僕は甲子園に出られなかったし、大事な試合も負けた。僕は負けている。その反骨心が僕にはある」。都城(宮崎)の1年夏は初戦の高千穂戦で敗戦投手となり、2年夏は優勝した宮崎日大に準々決勝で0―1と惜敗。必勝を期すド軍の思いは、山本に響いたのだと思う。

 16年12月の新入団会見から、その印象は変わらない。19年プレミア12、21年東京五輪、極寒の神戸で迎えたヤクルトとの頂上決戦、昨年の日本一も追った。地元・岡山のお気に入りのパン「バナチョコロール」を「うまいっスよ」と、お裾分けしてくれたこともあった。敵地のためチームバスの中で並んで座ってインタビューする風変わりな取材をした時も、「なんか笑えるっスね」と快く応じてくれた。基本は好青年。ここでは書けない、ちょっぴりブラックな一面もある人柄は、誰からも慕われると思う。

 最も印象深い言葉は「自分の向上心が尽きる時があるのか、自分でも分からない。凄い結果を残せたとしても、その時には別のやりたいことが出てくると思う」。強烈な向上心が、メジャーでの成功を後押しするはずだ。

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