王貞治ソフトバンク球団会長が選手を軽んじるわけがない「甲斐野っていうのが…」報道を憤る
2024年01月19日 15:23
野球
つい言葉が過ぎてしまった。ただ、それくらいあきれてしまった。
FAの人的補償問題について週刊誌の記者から取材を受けたソフトバンクの王貞治球団会長が西武へ移籍することになった甲斐野央投手について言及する際、「僕は決定した段階で、甲斐野っていうのが指名されたと聞いただけです」と答えたという。
この発言を巡って「王会長が自軍の1軍選手を知らなかった」かのごとく揚げ足を取る報道がされた。
「謙そん」とか「儀礼」という日本らしい文化はもうこの国から喪失してしまったのかと心配になる。
王会長の発言を「選手を知らない」と指摘する人物は、誰かに「つまらないものですが…」と差し出された土産物をつまらないものならイラネエとゴミ箱に捨ててしまうのだろう。
「甲斐野っていうのが…」という発言は、初対面で直撃してきたであろう週刊誌の記者に対して「あなたがどこまでご存じか分からないが、ウチには甲斐野という選手がいて…」という意味の、へりくだった物言いなのではないだろうか?
自軍の選手を知らないどころか、その逆。初対面の相手に自分の子供や親の自慢をしないのと同じ。普段から身内として考えているからこそ第三者である週刊誌記者に「甲斐野っていうのが…」という言い方をしたのだろう。
王会長がまだ球団監督だった頃だ。
あるとき、東京の週刊誌記者が王会長の身内の話題を追って、福岡の自宅を直撃取材した。その数日後、王会長の囲み取材を遠巻きにし、居心地悪そうにしていた週刊誌記者を見つけた王会長は「お、なんだ。君はまだいたのか。福岡のおいしいものは食ったかい?」と笑顔で迎えた。
ぶしつけで失礼な直撃取材にも真摯に対応してくれたばかりか、こうして担当記者の前で自分の存在を笑いに変えて受け入れてくれたことにその記者は本当に感謝していた。
スポーツ紙の球団担当であろうとスキャンダルを追う週刊誌記者であろうと1対1で対応するときは逃げないし、ウソはつかない。それが王会長の取材に対する姿勢だ。
それが「人格者」という評判を呼ぶ。
ダイエー監督時代に「退任」を報じたことがある。星野仙一氏の中日監督退任と重なり、「星野監督勇退」の見出しが並ぶ中、スポーツニッポン新聞社のみ1面トップの見出しが「王監督退任へ」だった。
もちろん徹底取材した上で確信を持って出した記事だったが、騒がせたことを謝罪にいくと、王会長は自身の退任報道についてはまったく怒らず、ただ一言「それはいいんだけど、星野くんに申し訳なかったね」とだけ言った。
自身の去就問題で周囲が大騒ぎする中、王会長だけは星野氏から1面を奪ってしまったことを気にしていた。
その王会長を一度だけ本気で怒らせたことがある。
2012年の侍ジャパン監督選任騒動のときだ。コミッショナーから人選を一任(という名の丸投げ)された王会長はソフトバンクを2年連続日本一に導いていた秋山幸二氏に代表監督候補を一本化した。
その事実をいち早く報じ、王氏に取材した上で難色を示した秋山氏を「王さんが口説く」と報じた。
事前に人選が明るみに出たことで秋山氏は就任を固辞。その直後、私は王氏から初めて質問を無視された。
無言で立ち去ろうとする王氏は去り際に振り返り、「僕は君たちのためと思って何十年もしゃべってきたけど、こうして誰かを傷つけることになるならもうしゃべらない!」と言った。
本当に申し訳ない気持ちになったのは言うまでもない。
自身の去就など書かれても動じない王氏だが、自身の発言で誰かが傷つくことは心の底から恐れている。
王氏ほど人生をかけた覚悟を持って書いたのだろうか?そうでないのなら今回の「甲斐野っていうのが…」発言を面白おかしい方向に曲解するのは止めてほしい。
そもそもFAの人的補償はプロ野球選手会が当初から猛反対していた制度だ。球界の最大功労者である王会長や当該選手に降りかかる火の粉も払えないのでは球団や日本野球機構(NPB)の仕事って何なのだろうか。(専門委員)
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