【内田雅也の追球】苦しい「事情」とは何か?

2024年03月10日 08:00

野球

【内田雅也の追球】苦しい「事情」とは何か?
<神・ヤ>7回、ヤクルト・増田に四球をを与えた阪神・岩貞(撮影・椎名 航) Photo By スポニチ
 【オープン戦   阪神2ー5ヤクルト ( 2024年3月9日    甲子園 )】 阪神監督・岡田彰布は甲子園球場での試合後、会見室で話した後、廊下~階段(またはエレベーター)~渡り廊下と、クラブハウスまでゆっくりと歩く。この時、ちょっとした雑談になる。
 この日、いつものように歩きながら、気になる言葉を漏らした。

 「まあ、言われへん事情があるんや。それで、こんな苦しんでるんやないか」

 意味深長である。何だろう。

 渡り廊下、立ち入り禁止区域の手前で突っ込むと「事情か? そんなもん、いっぱいあるわ」と笑ってごまかされた。

 話の流れからすれば、救援投手陣のことだ。直前の話題は岩貞祐太だった。この日、2―2同点の7回表に登板し、先頭打者への四球から自身の悪送球、連続四死球での押し出し……と乱調で3点を献上していた。

 岩貞不調は「ブルペンの通り。わかっていた」と岡田は言う。ただし、不調は承知でも実戦起用し、結果が出たうえで判断しなくてはならない。これも事情である。

 岡田は当初、左4人―右4人の救援陣編成を考えていた。絞り込みの時期となり「わからんよ。5―3(右5人―左3人)になるかもしれん」と構想は揺らいでいる。

 左腕は岩崎優、桐敷拓馬、島本浩也である。先発案もある及川雅貴も候補か。ただ島本もこの日ピリッとしなかった。

 右腕では石井大智が不調で、新人・椎葉剛もこの日、球威不足が見えた。好調と言えるのは新外国人のハビー・ゲラと岡留英貴あたりか。それが「事情」かどうかはわからぬが、ともかく、救援陣編成で苦しんでいるのは確かである。

 昨年のリーグ優勝、日本一の土台となったのは投手陣である。特に先発陣の防御率2・79をしのぐ2・39だった救援陣は阪神の頼みの綱だ。岡田が繰り出す必勝継投が勝利を呼んでいた。

 振り返れば、昨年もこの時期、救援陣編成は手探り状態だった。不安のなか、岡田は手を替え品を替え、勝利を手繰り寄せてきた。今年もまた、同じ苦労を強いられているわけで、それが監督手腕の見せ所だと言える。

 オープン戦は初戦から8戦全敗となり球団ワースト記録を塗り替えた。七十二候は「桃始笑」(ももはじめてさく)に入る。山笑う季節。きょう10日は甲子園に4万観衆を見込む巨人戦。心から笑える2024年初勝利を見たい。 =敬称略= (編集委員)

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