「最後の職人アナ」鈴木健二さん死去 引退の都はるみさんアンコールで名演出「私に1分間時間をください」

2024年04月04日 04:50

芸能

「最後の職人アナ」鈴木健二さん死去 引退の都はるみさんアンコールで名演出「私に1分間時間をください」
インタビューに答える鈴木健二さん=1988年5月、東京都渋谷区 Photo By 共同
 紅白歌合戦や人気クイズ番組「クイズ面白ゼミナール」の司会として活躍した元NHKアナウンサーの鈴木健二(すずき・けんじ)さんが3月29日午前5時30分、老衰のため福岡市内の病院で死去した。95歳。東京都出身。30日に通夜、31日に葬儀・告別式が近親者で営まれた。
 日本の放送史と共に歩み続けた昭和を代表するアナウンサーが、静かに旅立った。周囲によると、晩年は仕事はせず自宅で静かに暮らしていたという。2010年にインタビューで糖尿病などの闘病も明かしていた。

 鈴木さんは東北大卒業後、1952年にNHK入局。「こんにちは奥さん」や「歴史への招待」での名調子の語りが人気を博した。

 「“知るは楽しみなり”と申しまして…」の名調子で始まる「クイズ面白ゼミナール」は、メモに頼らず進行。全ての数字などを覚えていると視聴者を驚かせた。放送前には買い物袋いっぱいの資料をスタッフに渡され、それと同じ分量の資料も自分で集めて頭に叩き込んだ。そんな姿勢が「最後の職人アナ」とも評された。ビデオリサーチ調べでは、日本のクイズ番組史上歴代最高視聴率の42・2%を達成した。

 83~85年には紅白歌合戦の白組司会を担当。82年の視聴率が60%台に落ち、鈴木さんに白羽の矢が立った。中でも84年は今も語り草。引退表明していた都はるみさん(76)が大トリで「夫婦坂」を歌い切るも、会場は異例のアンコールが鳴り響き、鈴木さんが「私に1分間時間をください!」とアドリブで進行。紅白史上初のアンコールを演出した。この名文句は、当時の流行語にもなった。

 文筆活動にも力を入れた。番組作りや日々の生活で感じたことをまとめた「気くばりのすすめ」は文庫本などを合わせると400万部を超えるベストセラーに。出版関係者は「作家ではない人の本がここまで売れたのは歴史的なこと。日本人の感覚を新しくした」と文筆家としての功績も称えた。

《戦争体験執筆原稿は全て手書き》大ベストセラー「気くばりのすすめ」以外にも、鈴木さんには多くの著書がある。晩年の2019年には戦争体験を次世代に伝える「昭和からの遺言」(幻冬舎)を出版。編集担当者によると「東京大空襲で焼け野原になった両国の町を一緒に歩きましたが、当時、この場所には何があったとか、80年ほど前のことも、よく覚えていらした」という。同書は反響が大きく、中学校で教材に使いたいという連絡が多数寄せられた。原稿は全て手書きで、編集者がパソコンで打って送ると、赤ペンで加筆・修正され返信があったという。

《83年紅白初司会で眼鏡50本用意》鈴木さんは眼鏡がトレードマークだった。83年に紅白歌合戦の初司会が決まると、眼鏡販売大手アイリスメガネに、フレームに白、赤が使われた約50本を注文。出場歌手を紹介するごとに替えたい思いがあったという。同社には今も、このうちの5本が保管されている。いずれもモダンでおしゃれなデザイン。東京・渋谷にあった同社の博物館にも展示されていた。

 鈴木 健二(すずき・けんじ)1929年(昭4)1月23日生まれ、東京都出身。60年からの東京アナウンス室時代に、アポロ11号の月面着陸特別番組や、全線開通前の東海道新幹線からの生実況などを担当。88年に退職し、熊本県立劇場館長や青森県立図書館館長などを務めた。兄は映画監督の故鈴木清順さん。

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