競泳“世界で勝つ”ための派遣標準記録 ホープを育てるため五輪を経験させることも必要

2021年04月11日 14:30

競泳

競泳“世界で勝つ”ための派遣標準記録 ホープを育てるため五輪を経験させることも必要
<第97回日本選手権水泳競技大会 第5日>男子800メートル自由形決勝、優勝を果たしスタンドの拍手に応える黒川(撮影・会津 智海) Photo By スポニチ
 陸上男子100メートルに当てはめれば10秒12となる。
 東京五輪代表選考会を兼ねた競泳の日本選手権が10日に幕を閉じた。個人種目での代表内定には決勝レースで派遣標準記録を突破して2位以内に入ることが条件。池江の劇的な五輪切符獲得や、男子200メートル平泳ぎ元世界記録保持者の渡辺の落選などドラマを生んだ。

 日本水連が定める派遣標準記録は19年世界選手権の決勝進出ラインが基準で、国際水連の設定する参加標準記録よりも格段に速い。男子800メートル自由形では18歳の黒川が7分49秒55で12年ぶりに日本新記録を更新して優勝したが、派遣標準記録に1秒43届かず、東京五輪代表の座を逃した。

 冒頭の10秒12は陸上の19年世界選手権の男子100メートル決勝進出ラインのタイム。昨年10月の日本選手権決勝では10秒27で優勝した桐生でも切れていない。陸上の場合は派遣標準記録はなく、男子100メートルの参加標準記録は10秒05。ハードルは高いが、参加資格取得期間(19年5月1日~20年4月5日&20年12月1日~21年6月29日の計18カ月)に突破すればよく、一発勝負の競泳に比べて時間的猶予があり、既にサニブラウン、桐生、小池の3選手が記録を満たしている。

 日本水連の独自のタイム設定は“世界で勝つ”という高い志の表れだが、前述の黒川のようなホープが五輪舞台を経験できない損失は計り知れない。男子自由形の長距離は56年メルボルン五輪1500メートルの山中毅の銀メダルを最後に表彰台から半世紀以上遠ざかる。世界を知らなければ世界に追いつくのは容易ではない。

 決勝で日本新記録を樹立した場合は派遣標準記録に届かなくても代表権を与えるなどの緩和を議論する余地はある。五輪出場権を獲得した池江が「努力は必ず報われるんだと思いました」と涙したのは大会2日目。8日間の長丁場の戦いで、日本水連が設定する高い壁に夢を阻まれる選手が増えるにつれ、派遣標準記録について考えさせられた。(木本 新也)

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