パリで咲く北口の笑顔 女子やり投げ界の“花” 東京五輪の悔しさ胸に歴史へ挑戦

2024年01月01日 05:00

陸上

パリで咲く北口の笑顔 女子やり投げ界の“花” 東京五輪の悔しさ胸に歴史へ挑戦
日の丸を掲げ笑顔を見せる北口榛花(撮影・久冨木 修) Photo By スポニチ
 今夏「花の都」パリで五輪が開催される。金メダルを目指す陸上女子やり投げの北口榛花(25=JAL)が本紙の単独取材に応じ、24年のキーワードを「笑顔」に設定した。昨年8月の世界選手権で大逆転優勝を飾り、列島を沸かせたスーパーアスリート。マラソンを除くトラック&フィールド種目で日本女子初の偉業へ、現在の率直な思いを語った。
 あくまで自然体だった。北口が筆を執った一年のテーマは「笑顔」。トレードマークでもある言葉を意識し、「パリで笑顔を咲かせられるように」。既に陸上界で日本勢一番乗りの五輪切符を獲得。7カ月後、2度目の夢舞台がやってくる。

 「これからどうなるか、イメージが全くつかないんです」。正直に打ち明けるのも、無理はない。23年が「22年以上に幸せで、魔法の中にいるような年」だったから。19年を最後に伸ばせずにいた自身の日本記録を2度更新。ハンガリー・ブダペストでの世界選手権では、表彰台圏外の4位で迎えた6投目に66メートル73のビッグスロー。大逆転で世界一に上り詰めた。世界最高峰のダイヤモンドリーグファイナルでも日本人史上初の頂点に立った。

 日本女子の陸上界では五輪金メダルに到達したのは、00年シドニーの高橋尚子、04年アテネの野口みずきのマラソン2人のみ。トラック&フィールド種目では、とてつもなく高い海外の壁がそびえ立つ。それでも、北口は頂点への準備に抜かりはない。

 「東京五輪の時に、4年に1度の五輪は特別な場所だと凄く感じた」。初出場で目の当たりにしたのは、海外勢が目の色を変えて頂点だけを狙う姿だった。各選手が競技人生を懸けた頂上決戦に、当時23歳の北口は萎縮した。だが、今は違う。海外でのしびれる試合を重ね、世界一を争うライバルたちは良き友人たちになった。昔なら緊張で足が震えた国際舞台は、日常の延長だ。「東京の時に見た海外選手のオーラ、気迫を次は自分が出せるようにしたい」と自信を見せた。

 パリはダイヤモンドリーグで優勝経験のある縁起の良い地でもあるが、会場は最大8万人収容のフランス競技場へ移る。「同じパリでも競技場が違ったら雰囲気は全く違う。五輪なのでその場所の色が濃く出る試合になると思う。華やかな景色が見られるのかな。どういう五輪になるのか凄く楽しみ」と心を躍らせる。

 パリでの大勝負は逃げ切りか、真骨頂の大逆転劇になるのか。「(試合展開の)イメージは全然ないです。いつもないんですよ(笑い)。6投目に投げようとしているんですか?といつも言われますけど、そんな余裕ないですから!(笑い)。全部、全力で投げますよ!」と明るく意気込みを口にした。

 東京五輪では決勝進出したが、左脇腹痛を発症して12位に沈んだ。試合に送り出された際、ダビド・セケラク・コーチにかけられた言葉は今も心に刻む。「今、歴史を変えられるのは自分しかいない」――。あれから3年。涙から笑顔へ。パリの大空へ、栄光への放物線を描く。

 ◇北口 榛花(きたぐち・はるか)1998年(平10)3月16日生まれ、北海道旭川市出身の25歳。北海道教大旭川中から旭川東高、日大を経て20年にJAL入社。高校時代から有望選手の「ダイヤモンドアスリート」に認定され、15年世界ユース選手権で女子やり投げ優勝。21年東京五輪12位。世界選手権は22年銅、23年金。自己ベストは23年9月に出した現日本記録でシーズン世界最高の67メートル38。1メートル79、86キロ。

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