貴乃花も敬意示した曙さん 元担当記者が悔やむ 協会に残っていれば「貴の乱」起こらなかったのでは

2024年04月12日 04:45

相撲

貴乃花も敬意示した曙さん 元担当記者が悔やむ 協会に残っていれば「貴の乱」起こらなかったのでは
2001年、断髪式で貴乃花にはさみを入れてもらう曙 Photo By スポニチ
 大相撲で史上初の外国出身横綱となり、格闘家としても活動した元横綱・曙の曙太郎(あけぼの・たろう、旧名チャド・ローウェン)さんが4月上旬に心不全のため東京都内の病院で死去した。54歳だった。曙さんと親交があった元相撲担当記者が悼んだ。
 チャドが亡くなった。彼には借りがあった。1993年のハワイ巡業取材。その合間に実家を訪ね、父が重い糖尿病を患って、膝から下を切断の危機にあることを取材した。家計を助けるための角界入門。父を元気づけるため、土俵で奮闘する姿を記事にしたのだが、「切断」の大見出しが躍った。「切断ばかり目立たせた」と悲しい目で抗議された。スポーツマスコミの説明をしているうちに互いの距離が近づいた。話すと頭がいいし、バランス感覚に優れ、相手の立場を思いやってくれた。

 横綱に昇進した頃の立行司で第28代木村庄之助は相撲の故事に詳しく平成の名行司と言われたが、曙は木村庄之助の元を訪ね所作の背景にある歴史を学んだ。庄之助が「日本人より日本人らしい」と称賛していたことが懐かしい。

 それなのに日本国籍を取得したものの東関部屋の跡目を継げず、相撲協会を退職せざるを得なかった。ライバル貴乃花は先に横綱になった3歳上の曙さんに敬意を示していた。親方同士になっても良き話し相手として関係を保てれば「貴の乱」のような性急なことは起こらなかったと思う。モンゴル出身横綱・朝青龍、白鵬たちの重しにもなれたはずだ。稀有(けう)な存在だっただけに早い死が残念でならない。 (スポニチOB、元相撲担当・富樫嘉美)

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