進化する大谷 外角高め攻略 穴がなくなり9分割のストライクゾーン全てで本塁打

2023年09月01日 02:30

野球

進化する大谷 外角高め攻略 穴がなくなり9分割のストライクゾーン全てで本塁打
エンゼルスの大谷 Photo By スポニチ
 エンゼルスはベテラン主力6選手をウエーバーにかけるなどプレーオフ進出へ諦めムードが漂うが、大谷翔平投手(29)は打者出場を続けている。30日(日本時間31日)のフィリーズ戦は1安打1打点。2位に9本差のリーグ断トツ44本塁打で、日本選手初の本塁打王へ独走が続く。「Monthly Shohei」8月編では、新指標「バーティカル・バット・アングル(VBA)」などのデータを基に、自己最多の46本塁打ながら初タイトルを逃した21年からの打撃の進化に迫った。(取材・奥田秀樹通信員)
 大谷の打撃の進化の鍵に高めの球の攻略が挙げられる。21年の7本塁打から2倍以上の15本。特に外角高めは21、22年は一本も打てなかったが、今季は既に4本も柵越えしている。コース別打率でも外角高めは21年から・286→・308→・440と上げている。

 米球界で注目されている新指標「バーティカル・バット・アングル(VBA)」にその一因が見て取れる。インパクトの瞬間の打者のスイング角度を示し、仮に地面に対して水平に振れば0度、垂直に振れば90度。打球角度や、投球に対するスイングの入射角を表す「アタックアングル」とは異なり、あくまで地面に対してのスイングの角度を表す。例えば、高めに強い20年ナ・リーグ首位打者のパドレス・ソトの今季平均角度は24・8度、低めに強い大谷の同僚トラウトは同36・7度と極端な特長の違いを知ることができる。高めの球を捉えるには数字が小さい“横振り”、低めの球には大きい“縦振り”がセオリー。今季の大谷の同指標は21年の36・1度から、33・2度に変化していた。

 違いは2・9度だが、高めの球に対応できる“横振り”のスイング要素が増したことが分かる。同指標を公表する米データサイト「スインググラフス」を運営するDK・ウィラードソン氏は本紙取材に「今季の大谷は打球角度が安定し、コンタクトの質が上がっている」と解説する。実際に21年の外角高めの空振り率46%&打球角度8度に対し、今季は同17%&23度に向上。さらに平均打球速度は21年の92・9マイル(約149キロ)から94・7マイル(約152キロ)にアップし量産につながった。

 6月15日のレンジャーズ戦は左腕バークの外角高めスライダーを手元まで引きつけ、体に巻き付くような“横振り”の軌道で中堅左の2階席付近まで運ぶ22号。飛距離約135メートルだった。技術的に細かく言及することはあまり多くない大谷だが、6月27日には「一番は軌道じゃないかなと思う。自分の理想の軌道で振れている時は、左右、球種に関係なく長い間(ボールに)コンタクトできる準備ができている」と語った。スイング軌道、すなわちVBAと結びつく。

 外角高めだけではなく、今季は初めて9分割のストライクゾーン全てで本塁打を記録。いずれも打率3割を超す。「大谷の外角高めと内角低めの球に対するVBAの違いは約10度。打者が追い求める理想的な角度差」とウィラードソン氏。内角低めは外角高めとは両極端な“縦振り”のバット軌道が求められるが、そこも対応している。ソトのように高めをさばき、トラウトのように低めをすくい上げる。30日時点で年間53本塁打ペース。穴がなくなった打撃でどこまで積み増していくか。

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