【内田雅也の追球】走者一塁での「仕事」 好機拡大という「主目的」を着実に果たした阪神

2023年09月13日 08:00

野球

【内田雅也の追球】走者一塁での「仕事」 好機拡大という「主目的」を着実に果たした阪神
<神・巨>2回、坂本は三塁強襲の内野安打を放つ(撮影・後藤 大輝) Photo By スポニチ
 【セ・リーグ   阪神1―0巨人 ( 2023年9月12日    甲子園 )】 「守りの野球」を掲げる阪神監督・岡田彰布が「一つの理想」という1―0勝利だった。今季もう6度目となる。
 巨人との明暗を描いたのは、走者一塁での打撃(または作戦)だった。

 先制決勝の犠飛を上げた木浪聖也が「最低限の仕事」と語っていた。犠飛で三塁走者を還したときによく使われる言葉だが、この「最低限」は難度が高い。無死か1死で走者が三塁にいれば「外野フライで1点」などと言うが、事はそうたやすいものではないだろう。

 同様に走者一塁で打者の「最低限の仕事」に「つなぎ」がある。バントや進塁打などで一塁走者を進める打撃である。

 野村克也が『野球論集成』(徳間書店)でヒットエンドランについて<結果として最低限走者を進めるという考えで敢行する>と書いている。ただし<チャンスを広げることが主目的と心得よ。「何とか転がして走者を進めておけばいいや」という消極的な考えは厳禁>と戒めている。

 阪神はこのヒットエンドランが決まった。2回裏は1死一塁。坂本誠志郎が3ボール2ストライクのフルカウントとなり岡田はヒットエンドランを仕かけた。坂本は低めカッターに食らいつき、三塁強襲安打で一、三塁と<主目的>の好機拡大に成功。木浪の犠飛を呼んだのだ。

 1回裏無死一塁でも同じフルカウントで一塁走者がスタート。中野拓夢は外角フォークを引っ張って転がし二ゴロ。走者を進めている。

 この時は一塁走者が近本光司でランエンドヒット。坂本の時の走者はシェルドン・ノイジーでヒットエンドランだった。

 一方の巨人は計4度の走者一塁で1度も走者を進められなかった。いや、西勇輝が進めさせなかったのだ。得意のシュートが右打者内角、左打者外角に切れていた。

 順に書いてみる。▽2回表無死一塁=坂本勇人を内角シュートで詰まらせ投ゴロ併殺打▽3回表無死一塁=左打者の吉川尚輝を外角攻めで引っ張らせず、遊ゴロ併殺打▽7回表1死一塁=同じく左打者の丸佳浩を外角攻めのうえ、ひざ元速球で見逃し三振▽9回表1死一塁=梶谷隆幸を外角攻めで追い込み、内角速球で一飛。最後は2死からの二盗を坂本が見事に刺して試合終了。最後まで二塁を踏ませなかった。

 阪神は交代なしの9人野球。岡田は「何もすることなかったわ」と笑っていた。=敬称略=(編集委員)

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