【アレのアレをありがとう】カンテレ・新実彰平アナ 日本S第7戦実況「刺し身を刺し身のまま」

2023年12月14日 05:15

野球

【アレのアレをありがとう】カンテレ・新実彰平アナ 日本S第7戦実況「刺し身を刺し身のまま」
「日本シリーズ第7戦の中継を担当し、岡田監督の胴上げを実況したカンテレ・新実アナ
 1985年以来、38年ぶりの日本一に輝いた岡田阪神。「アレのアレをありがとう」と題し、猛虎にゆかりのある人物、団体などから届いた歓喜の声を随時紹介してきた。最終回は、記録的な視聴率となった日本シリーズ第7戦の実況を担当したカンテレの新実彰平アナウンサー(34)に話を聞いた。
 38年ぶりの阪神日本一の毎分最高視聴率(世帯)が関西地区で50・0%、平均世帯視聴率も関西で38・1%(いずれもビデオリサーチ調べ)。オリックスと阪神による日本シリーズ第7戦は、スポーツ中継としても記録に残るものとなった。その実況マイクを担当したのが新実アナだ。

 「いろんな条件がそろわないと実現しない試合だった。しかも、第7戦の意味は凄く重い。荷が重過ぎる感じは正直、ありました」

 11月5日の朝は大阪市北区扇町の会社内で迎えた。第6戦の結果を受けて、実況用にまとめていた両軍の40人枠、計80選手のデータと第6戦までの流れをまとめた資料のチェックに朝4時までかかった。軽く睡眠を取り、発声練習をしてから球場入り。丁寧に準備を進める中で「自分でいいのか」という迷いは消え「安全に間違いなく、余すことなく伝える」という意識に集中することができた。

 運命というものを感じていた。新実アナにとって、別れと出会いがあった2023年だった。報道の最前線で事実を伝えることを使命とし、メインキャスターを6年間務めた夕方のニュース番組「報道ランナー」が3月末で終了した。一緒に番組を作ってきた仲間と離れ、一人だけ船を降りる感覚だった。「残念な思い。葛藤はあった」。だが、この人事が阪神日本一の実況につながる。「何かを失わないと何かを得られない。そんな言葉を思い出しました」と振り返った。

 新実アナにとって野球は人生そのものだった。少年時代から野球に打ち込み、京大でも野球部でプレー。4年春には関西学生野球リーグで首位打者と捕手のベストナインにも輝いた。「自分の人格のほとんどは野球を通じて形成されたと思っている」。カンテレ入社後もクラブチームで野球を続けた。それでも野球を知っているから、うまく伝えられるとは限らない。「乗せる言葉は最小限でいい。目の前で起きていることが既に至高のものなのだから、刺し身を刺し身のまま届けるべきだと思って中継した。込めた思いは(会社の)先輩や野球を始めさせてくれた両親、そして野球へのリスペクトだけでした」と岡田監督の胴上げも、感情に流されず伝え切った。

 「やはり今年の阪神の野球は素晴らしかった。四球を選ぶとか制約をかけながら勝機を目指し、選手がそれに応えた。この野球が来年どれだけアップデートされるのか。想像がつきませんね」。いろんな縁が重なって生まれた日本一中継。阪神の“これから”に、スポーツアナとして興味は尽きない。 (鈴木 光)
 =終わり=

 ◇新実 彰平(にいみ・しょうへい)1989年(平元)4月10日生まれ、京都府出身の34歳。洛星中・高を経て京大法学部に進み、12年4月にカンテレ入社。16年に史上最年少の26歳で「第32回FNSアナウンス大賞最優秀賞」を受賞。17年4月から6年間の「みんなのニュース 報道ランナー」メインキャスターを経て、今年4月からプロ野球中継などを担当。

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