【内田雅也の追球】どん底を脱する姿勢

2024年04月13日 08:00

野球

【内田雅也の追球】どん底を脱する姿勢
<中・神>8回、代打・糸原は粘って四球を選ぶ(撮影・椎名 航) Photo By スポニチ
 【セ・リーグ   阪神2-2中日 ( 2024年4月12日    バンテリンD )】 阪神監督・岡田彰布は「マイナス思考」と自覚し、開幕前は「0勝143敗から考える」と言うほどである。「最悪を想定したうえで準備する」と聞いてきた。
 ならば、今の打線は、その想定していた最悪の状態ではないだろうか。先の広島3連戦は合計3点しか奪えなかった。
 この夜も先発・柳裕也の前に7回まで、2安打無得点と沈黙していた。打線は低調だった。

 ただし、打者たちの何とかしようとする姿勢は見えていた。初回先頭の近本は2球で追い込まれながらファウル6本で粘り、11球を投げさせていた。食らいついていた。

 そんな姿勢が実ったのが8回表だった。投手は2番手・勝野昌慶に代わっていた。1死から代打・糸原健斗がファウル6本で粘り、12球目で四球をもぎ取った。この不屈の姿勢に奮いたたない者はいないだろう。

 木浪聖也が左前打でつないで一、二塁。代打シェルドン・ノイジーの左翼後方への飛球で、二塁走者に加え、一塁走者・木浪も二塁を奪った。相手遊撃手が三塁と結ぶ中継点に入っていたのを見ていたのだろう。冷静かつ果敢な好走塁だった。

 2死二、三塁。岡田は同点の二塁走者に代走・小幡竜平を送った。

 近本光司が追い込まれながら、外角変化球に食らいついた。引っかけたゴロが二塁右に転がり、一塁送球もそれた。二塁から小幡も生還して(記録は2点内野安打)、同点に追いついたのだ。

 小幡の俊足が効いたのはもちろんだが、第2リードもスタートも、さらに三塁を蹴っての本塁突入の闘志も光っていた。

 好走塁の木浪も小幡も走る姿に心が映っていた。「走姿顕心」である。

 何も気休めで書くのではない。どん底ならば、後は上り調子ではないか。懸命に食らいつき、走って奪った2点、そして引き分けに光を見たい。

 「絶望のどん底ということは、あとは希望しかないってことじゃない」という、赤毛のアンの言葉を思いだした。

 ペナントレースは一寸先は闇だという。岡田も「山あり谷あり」だと開幕前に訓示していた。

 アンはこうも話している。「曲がり角の向こうに何があるかわからないけれど、きっとすばらしいものが待っていると信じることにしたわ」

 この夜の戦いから、もうどん底は脱したと希望を見たい。 =敬称略= (編集委員)

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