NPB審判員記者が見た明大・宗山 打っては誠也、守っては鳥谷の今秋ドラフト注目株

2024年04月20日 05:00

野球

NPB審判員記者が見た明大・宗山 打っては誠也、守っては鳥谷の今秋ドラフト注目株
明大の紅白戦で9回、右飛になるも大飛球を放つ明大・宗山。球審を務めた柳内記者(撮影・郡司 修)  Photo By スポニチ
 【突撃!スポニチアンパイア】東京六大学野球リーグの明大は20日、春季リーグ初戦の東大戦を迎える。3月の侍ジャパン強化試合に招集され、今秋ドラフトで最大の目玉となる宗山塁主将(4年)は、2月末のオープン戦で右肩甲骨を骨折するも順調に回復し、遊撃でスタメン出場が濃厚。元NPB審判員の柳内遼平記者(33)が明大の紺(紅)白戦で球審を務め、逸材の実力をジャッジした。
 「学生野球の父」の飛田穂洲も「ミスタープロ野球」の長嶋茂雄も、1925年(大14)に始まった東京六大学野球を彩った。宗山が99年の歴史で刻まれた記録に挑戦する。故障前に行われた明大の紺白戦で球審を務める私から、左打席に入った宗山まで1メートル。さえぎるものはなく、背番号10が足場をつくり砂煙が舞った。

 積み重ねた安打は94本で、明大・高山俊(現オイシックス)の131安打のリーグ記録が射程圏内にある。リラックスした構えは鈴木誠也が重なった。現在カブスでプレーする鈴木は、広島1年目の18歳だった当時から楽しむように「チワッ!」と球審の私にあいさつして打席に入り、年齢不相応な自然体が出世を予感させた。宗山の背中も「いらっしゃい」と語っているようで、既に風格がある。

 第1打席初球は内角低めに外れるスライダーを見逃し。初球からタイミングがバッチリ。驚異のアジャストに通算打率・348の対応力がにじんだ。快音を響かせるも打球が野手の正面を突き、無安打で9回を迎えた。

 7球目の直球をフルスイングした打球は青空に一直線。木製バットと硬球が衝突した快音が、防具を貫き私のおなかに直撃した。角度が出すぎた打球は右翼手が捕球するも、滞空時間は驚異の7秒26。花巻東(岩手)で史上最多の140本塁打を放ち、米スタンフォード大に進学した佐々木麟太郎が、2年夏の岩手大会で「7秒フライ」を放ち話題になったが、匹敵する飛球でパワーも示した。

 現役最多のリーグ通算8本塁打。捉えていたら場外と思わせる、これまでになかった強振だった。それもそのはず。「バットを一番加速させた状態でボールに当てることがテーマ。加速距離が去年より伸びている」と意図した進化だった。

 アマチュアNo・1と評される遊撃守備は「お金を取れる」華がある。球審は投球とバットが当たった点から一直線に打球を追うことができる「守備の特等席」。舞うように打球処理をする宗山が阪神時代の鳥谷をほうふつさせた。記者は11年に阪神安芸キャンプを担当。当時の鳥谷の守備は「ボールが自発的にグラブに入っていく」ように見えた。無駄を極限まで省き、脱力して打球処理することで生まれる錯覚。再現した本人は「無駄な力は入れない。一番捕りやすいところに足を運ぶ意識なのでそう見えるのかな」と分析した。

 現場第一のNPB審判員は、数字で選手を評価しない。「凄い」と感じた選手には必ず後から数字がついてくるからだ。宗山と9イニングを駆け抜けた2時間23分で「東京六大学に新たな歴史を刻む男になる」と確信した。

 【後記】忘れもしない22年夏。甲子園取材を終えた夜、梅田でパ・リーグ球団のスカウトと会食し、「24年ドラフトで宗山は目玉になれるのか?」という議論になった。当時、プロの遊撃手には「俊足」が必須と考えており「足は普通なので目玉になりえますか?」と懐疑的な意見を出した。スカウトは「そりゃないよ。宗山が今年の候補だったら12球団1位指名よ」と笑った。あれから2年弱、私は「宗山の凄さ」を嫌というほど見てきた。

 現役だった16年以来、8年ぶりに1試合を通して球審を担当した。コールの連呼で喉がつぶれた。ブランクは甘くなく、ストライクゾーンの安定感も欠いていた。それでも宗山は球審目線からの分析を「同じグラウンドの目線で見てもらったことはなかったので凄く新鮮でした」と優しく歓迎してくれた。一番近くから選手としての凄みを肌で感じ、2年前の懐疑を改めて反省した。(アマチュア野球担当キャップ・柳内 遼平)

 ◇宗山 塁(むねやま・るい)2003年(平15)2月27日生まれ、広島県出身の21歳。三良坂小1年で野球を始め、三良坂中では軟式野球の高陽スカイバンズでプレー。広陵(広島)では1年夏、2年春に甲子園出場。明大では2、3年時に侍ジャパン大学代表入り。憧れの人はサッカー選手、実業家の本田圭佑。1メートル75、78キロ。右投げ左打ち。

 ◇柳内 遼平(やなぎうち・りょうへい)1990年(平2)9月20日生まれ、福岡県福津市出身の33歳。光陵(福岡)では外野手としてプレー。四国IL審判員を経て11~16年にNPB審判員。2軍戦では毎年100試合以上に出場、1軍初出場は15年9月28日のオリックス―楽天戦(京セラドーム)。16年にMLB審判学校卒業。16年限りで退職し、公務員を経て20年スポニチ入社。

 ≪44年ぶり「グレーユニ」お披露目≫明大は、東大との初戦で80年以来44年ぶりに復活するグレー基調のユニホームをお披露目する。今季から三塁側ベンチでリーグ戦を戦う際に着用。OBから復刻を望む声が上がり実現した。1月のOB会で袖を通した宗山は「光沢があって格好良い。ワクワクする」と話していた。

 ≪「もう大丈夫」スタメン出場濃厚≫宗山は2月29日の明治安田生命とのオープン戦で死球により右肩甲骨を骨折した。田中武宏監督は「全治3カ月と聞いている」とも話していたが、4月7日のHondaとのオープン戦でDHで実戦復帰し「もう痛みはないし、スイングしても大丈夫」と回復をアピール。さらに14日の東洋大とのオープン戦は「3番・遊撃」でフル出場。春季リーグ戦初戦となる20日の東大戦はスタメン出場する見込みだ。

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