【コラム】海外通信員
絶大なるメッシ人気 新ユニが爆売れ MLSの人気も向上!?
2023年07月25日 16:20
サッカー
今、アルゼンチンは冬休みの真っ只中。私が住むブエノスアイレスでは、ショッピングセンターや緑地公園、映画館などがたくさんの子どもたちで賑わっているが、気温が25度近くまで上がった天気の良い先週末、それらの場所に出向いて一つ驚いたことがあった。行く先々で、背中に「MESSI」の名前と背番号10がマーキングされたインテル・マイアミのユニフォームを着ている子を見かけたのだ。
これは間違いなくリオネル・メッシの人気度を示す現象だが、なぜ私がそれに驚いたのかはわかってもらえないかもしれない。「アルゼンチンなのだからメッシは当然人気者。そしてそのメッシが所属するチームのユニフォームを子どもたちが着ていても決して不思議ではない」と思う方も少なくないだろう。
驚いた理由は幾つかあるが、その一つは「普及の早さ」だった。
メッシがインテル・マイアミに入団し、アディショナルタイムの直接FKから決勝点を決めてMLSデビューを華々しく飾ったのが去る7月21日。私が街中でフラミンゴカラーのマイアミのユニフォームを着た子どもたちを見かけたのはデビュー戦の翌日と翌々日だったことから、ほとんどの子どもたちはメッシのマイアミ・デビューを待たずにユニフォームを買ってもらっていたことになる。
アルゼンチン国内ではインテル・マイアミのウェアの正規品販売がないため、それらは偽物か、またはネットで入手できる個人輸入品、もしくは家族か知人のマイアミ土産のいずれかだろう。実際、ブエノスアイレス市内に点在するキオスコ（雑誌や新聞を売るスタンド）でも偽物のアルゼンチン代表ユニフォームと一緒に店頭に並んでいるのを見たし、出どころ不明の製品が（ホーム、アウェイ、サードの全モデルが）ネットでも普通に販売されている。
キオスコの店主によると「飛ぶように売れていて仕入れが追いつかない」とのことで、ハイパーインフレによる物価高から衣料品の売り上げが著しく低下するアルゼンチンにおいて、インテル・マイアミのユニフォームは瞬く間に人気商品となったのである。
もう一つの理由は、それが「アメリカのクラブのユニフォーム」だということ。
アルゼンチンのサッカー愛好家たちの間では、W杯の歴代優勝国以外の国を格下として見くびる人が多く、メディア関係者の中にも新興国の成長を認めない者がいる。そんなアルゼンチンで、子どもたちが「野球の国」アメリカのクラブのユニフォームを着るようになるとは、一体誰が想像できただろう。
さらにそれがピンク色であることも軽視できないポイントだ。LGBTQなどの性的マイノリティを支援する活動が盛んなアルゼンチンだが、男尊主義の影響が根強く残るサッカー界ではピンクのユニフォームが毛嫌いされる傾向にある。
そもそも、サッカー人気が「クラブへの忠誠心と深い愛情」によって支えられ持続しているこの国で、自分の贔屓クラブ以外のユニフォームを着て一人の選手を応援するようなことは一昔前までは考えられなかった。もし10年前、「アルゼンチンの子どもたちがやがてアメリカのクラブのピンク色のユニフォームを着ることになる」と予言していたら笑われていたに違いない。それほど予想外のことを、メッシはやってのけた。私が驚いたのは、彼のその多大な影響力だったのだ。
「アルゼンチンなのだからメッシが人気者なのは当然だろう」と思われるかもしれない。だが、2011年にアルゼンチンで開催されたコパ・アメリカで、母国のサポーターから容赦ないブーイングを浴びるメッシを観た私にとって、今のこの現象には感慨深いものがある。昨年のW杯優勝を機にメッシが「完全なる国民的英雄」と化した証と言っていいだろう。
メッシのMLSデビューとなった対クルス・アスル戦の視聴者は1250万人にも及び、NBAファイナルの視聴者数を超えたことが話題となったが、この一戦にはアルゼンチンからも多くのメディアが取材に訪れ、当日は「歴史的な日」と報じられた。スポーツ番組ではインテル・マイアミの情報が随時流れ、その詳細は試合のスケジュールはもちろん、負傷者の近況報告にまで至る。アルゼンチン国民をサポーターにつけてMLSで旋風を巻き起こすメッシに、私自身も日に日に魅了されそうだ。（藤坂ガルシア千鶴＝ブエノスアイレス通信員）
驚いた理由は幾つかあるが、その一つは「普及の早さ」だった。
メッシがインテル・マイアミに入団し、アディショナルタイムの直接FKから決勝点を決めてMLSデビューを華々しく飾ったのが去る7月21日。私が街中でフラミンゴカラーのマイアミのユニフォームを着た子どもたちを見かけたのはデビュー戦の翌日と翌々日だったことから、ほとんどの子どもたちはメッシのマイアミ・デビューを待たずにユニフォームを買ってもらっていたことになる。
アルゼンチン国内ではインテル・マイアミのウェアの正規品販売がないため、それらは偽物か、またはネットで入手できる個人輸入品、もしくは家族か知人のマイアミ土産のいずれかだろう。実際、ブエノスアイレス市内に点在するキオスコ（雑誌や新聞を売るスタンド）でも偽物のアルゼンチン代表ユニフォームと一緒に店頭に並んでいるのを見たし、出どころ不明の製品が（ホーム、アウェイ、サードの全モデルが）ネットでも普通に販売されている。
キオスコの店主によると「飛ぶように売れていて仕入れが追いつかない」とのことで、ハイパーインフレによる物価高から衣料品の売り上げが著しく低下するアルゼンチンにおいて、インテル・マイアミのユニフォームは瞬く間に人気商品となったのである。
もう一つの理由は、それが「アメリカのクラブのユニフォーム」だということ。
アルゼンチンのサッカー愛好家たちの間では、W杯の歴代優勝国以外の国を格下として見くびる人が多く、メディア関係者の中にも新興国の成長を認めない者がいる。そんなアルゼンチンで、子どもたちが「野球の国」アメリカのクラブのユニフォームを着るようになるとは、一体誰が想像できただろう。
さらにそれがピンク色であることも軽視できないポイントだ。LGBTQなどの性的マイノリティを支援する活動が盛んなアルゼンチンだが、男尊主義の影響が根強く残るサッカー界ではピンクのユニフォームが毛嫌いされる傾向にある。
そもそも、サッカー人気が「クラブへの忠誠心と深い愛情」によって支えられ持続しているこの国で、自分の贔屓クラブ以外のユニフォームを着て一人の選手を応援するようなことは一昔前までは考えられなかった。もし10年前、「アルゼンチンの子どもたちがやがてアメリカのクラブのピンク色のユニフォームを着ることになる」と予言していたら笑われていたに違いない。それほど予想外のことを、メッシはやってのけた。私が驚いたのは、彼のその多大な影響力だったのだ。
「アルゼンチンなのだからメッシが人気者なのは当然だろう」と思われるかもしれない。だが、2011年にアルゼンチンで開催されたコパ・アメリカで、母国のサポーターから容赦ないブーイングを浴びるメッシを観た私にとって、今のこの現象には感慨深いものがある。昨年のW杯優勝を機にメッシが「完全なる国民的英雄」と化した証と言っていいだろう。
メッシのMLSデビューとなった対クルス・アスル戦の視聴者は1250万人にも及び、NBAファイナルの視聴者数を超えたことが話題となったが、この一戦にはアルゼンチンからも多くのメディアが取材に訪れ、当日は「歴史的な日」と報じられた。スポーツ番組ではインテル・マイアミの情報が随時流れ、その詳細は試合のスケジュールはもちろん、負傷者の近況報告にまで至る。アルゼンチン国民をサポーターにつけてMLSで旋風を巻き起こすメッシに、私自身も日に日に魅了されそうだ。（藤坂ガルシア千鶴＝ブエノスアイレス通信員）
