【コラム】海外通信員
新シーズンに光りが見えないレアル 原因はジダン監督!?
2019年08月30日 12:00
サッカー
アザールが負傷離脱している現状で、監督ジネディーヌ・ジダンはリーガ第1節セルタ戦、そして先のバジャドリー戦で昨季まで在籍していた選手たちをスタメンとして起用。バイエルンから出戻ったMFハメス・ロドリゲスもスタメン出場したバジャドリー戦であれば、昨夏加入のGKティボ・クルトゥワ以外は2014-15シーズンから在籍した選手たちがスタメンを張っている(DFダニ・カルバハル、ラファエル・ヴァラン、セルヒオ・ラモス、MFカセミロ、トニ・クロース、イスコ、ハメス、ガレス・ベイル、FWカリム・ベンゼマ)。失望のシーズンを過ごしたレアルに、これほどまでにレボリューションがないというのは、逆にレボリューションである。
なぜ、逆レボリューションが起きたのか。第一の理由は、ジダンの存在にある。会長フロレンティーノ・ペレスのSOSを受けて監督復帰を果たしたジダンは、今季の陣容づくりに関する権限を与えられたが、自身が望む選手以外の獲得を跳ねつけている。例えばマンチェスター・ユナイテッドMFポール・ポグバの獲得要請だ。クラブ側は獲得のハードルがあまりにも高いフランス代表MFに代わる選手としてアヤックスMFファン・デ・ベーク、トッテナムMFクリスティアン・エリクセンを手中に収められる状況としているが、フランス人指揮官は首を横に振り続けている。
ジダンは、チームを間違いなく改善できると思える選手以外を拒みながら、ここまで来た。その信念は、チャンピオンズリーグ三連覇をともに成し遂げた選手たちへの信頼を強調する上ではポジティブに働くはずで、一時戦力外扱いとしたベイル、ハメスに対しても筋を通すものにもなる。彼が望むのは現陣容のさらなる進化であり、もしそれが叶わないとしたら、たとえ売却先が見つからないという背景はあれども開き直ってベイル、ハメスを戦力に数えればいい。
ただ現状は、失望のシーズン後になぜレボリューションが必要なのかを改めて示しているようでもある。もし新顔が多いスタメンでシーズンをスタートさせ、結果が伴わなかったり期待の選手が活躍しなかったりすれば「まだチームは成長・適応の段階にある」というエクスキューズが成り立つ。一方、ほぼ変わらないスタメンで結果が出なければ、ただ批判だけが生まれることになる。昨季失敗したチームで、同じことを繰り返す未来しか見えないために……。レアルがそんな状況に陥るのは、バジャドリー戦の引き分けだけで十分だった。加えてバジャドリー戦後にハメス、イスコが負傷離脱し、ここ50日間で9人も負傷者が出たことで、悲観論は渦を巻くことになった。
兎にも角にも、レアルは荒波にもまれながら新シーズンをスタートさせることになった。フットボールはいつもそういうものではあるが、しかし現状は、これまで以上に先が読めない。スペインは9月2日まで移籍市場は開いているために、サポーターが声高に求める補強に関してはここからサプライズが生まれるかもしれない。いや、さらなる補強がなくとも、平均年齢が29歳を超える元絶対的王者の選手たちが、ここからその顔をのぞかせるのかもしれない。はたまた、負傷から復帰を果たすアザールや、ここまでは主力として扱われていない新戦力がチームに新しい風をもたらすかもしれない。そうでなければ、皆が予想している通りに失望のシーズンを繰り返すのかもしれない……。先行きは、まったく分からない。そうした状況でジダンは、明確な根拠があるのかどうかは不明であるものの、このように言い切っている。「私は素晴らしい陣容を擁している。今季は絶対にうまく行く。そう確信しているよ」(江間慎一郎=マドリード通信員)