【コラム】海外通信員
ブラジルxアルゼンチン戦突然の中断(上) 乱入者登場
2021年09月13日 21:30
サッカー
え?一体何が?とテレビの実況アナまでが大慌てしていた。
ピッチに入って来たのは、ブラジル政府の保健当局であるAnvisa(アンビザ=国家衛生監督庁)と連邦警察だった。Anvisaは国家の公衆衛生管理のトップであり、Covid19対策で検疫措置、ワクチン接種を実行する国家機関である。
一体なぜ?
Anvisaと連邦警察はウエストハム所属のGKエミリアーノ・マルティネスとMFエミリアーノ・ブエンディア、そしてトッテナム所属のDFクリスティアン・ロメロ、MFロ・チェルソの計4人の身柄を確保し連行した。うち3人は試合に出ていた。その場でConmebol(南米サッカー連盟)、CBF(ブラジルサッカー連盟)、AFA(アルゼンチンサッカー協会)は抗議をしたが、結局試合は中断、そのまま再開されることなくサスペンションとなった。
色々な情報が飛び交ったが、9月12日現在わかっていることは以下のようになる。結局のところ、行き着くところは政治問題につながる。
話を遡ること、8月13日。セレソンのチッチ監督はカタールW杯南米予選のチリ、アルゼンチン、ペルー戦のためメンバー召集をした。
ところが、8月24日、プレミアリーグ(以下PL)は英イギリス政府が指定する「レッドリスト」に該当すると発表した。ブラジルもアルゼンチンもこのリスト国に入っており、選手たちは帰国後、10日間の隔離が義務付けられる。すなわち、PL2試合、UEFAコンペティション1試合、リーグカップ3回戦に出場できなくなるという影響を考えれば、選手派遣を拒否するという結論に達したわけだ。FIFA(国際サッカー連盟)のインファンティノ会長はジョンソン英首相にW杯予選という特別なケースの特例措置を求めたが緩和の許可はされなかった。
このため、8月27日、CBFは9人のプレミア組を断念し代わりのメンバーを呼んだ。PLの選手はアリソン、エデルソン、チアーゴ・シウヴァ、ファビーニョ、フレッヂ、ホベルト・フィルミーノ、ハフィーニャ、ヒシャリソン、ガブリエウ・ジェズスだったが、大幅な選手の入れ替えになり、主要選手無しに戦うことを余儀なくされた。
これまでFIFAは各国政府と交渉をして様々な特例の恩恵を受けてきたが、今回、英国政府は自国の検疫と国民の安全を優先した。CBFもそれに従うこととした。
しかし、アルゼンチン代表はPLの4人を起用することにした。アルゼンチンのストラテジーは、4人は3試合でなく2試合のみで切り上げ、直接英国に返さず隔離義務の無いクロアチアで10日間練習を続けて英国に戻り、すぐに試合に出るという条件でクラブと調整をしたのだ。
そこまでは、良かったのだが、問題は、ブラジルへの入国だった。
現在、ブラジルに入国する際、過去14日以内に英国(グレートブリテン及び北アイルランド連合王国)及び南アフリカ、インドに滞在した経歴を有する渡航者は、14日間の隔離措置を講じなければならない。だから、アルゼンチン代表の4人はブラジルに入国はできるけれど、14日間の隔離義務があった。となると、試合には出てはいけないことになる。(続く)