【コラム】海外通信員
ボローニャ旋風の予感 スカウト強化などクラブは着実に前進
2019年08月11日 09:00
サッカー
しかし2014年、北米の資本家グループが経営に乗り出す。2015年からは、カナダで大手乳製品メーカーの経営に携わっていたジョーイ・サプート氏が単独で会長職に就任。まずは資金を投下して練習場を一新し、トップチームや下部組織の練習環境を劇的に変えた。一方でトップチームは相変わらず残留を争う立場からは脱していなかったが、昨シーズンに転機が訪れた。フィリッポ・インザーギ監督のもとでチームは下位に低迷、残留に向けて危機的な状況となる。そこでサプート会長は2019年の冬に覚悟を決めた。監督を更迭してフィオレンティーナやミランで指導経験のあったシニシャ・ミハイロビッチ監督を招聘。そしてなりふり構わず強力な選手数人をレンタルで獲得し、全ポジションに渡って補強を敢行したのである。その結果チームは残留どころか、10位でフィニッシュしたのである。
「学ぶ期間は終わった。今後は常に順位表の左側(10位以上)にいるようにしたい」とサプート会長は目標を切り替えた。そしてこの夏、彼らは勝負に出る。まずは、レンタルしていた選手たちを引き止めた。ビジャレアルからレンタル移籍した2人のイタリア代表、左ウイングのロベルト・ソリアーノとトップ下のニコラ・サンソーネ、そしてユベントスが権利を持っていた右ウイングのリッカルド・オルソリーニをまとめて完全移籍。それだけで実に、3000万ユーロに近い額の金を投下したことになる。
加えて彼らは、有望な若手を主にベルギー、オランダ、北欧方面から獲得した。オランダ人MFのイェルディ・スハウテンは、エクセルシオールで評価を上げたプレーの幅の広いテクニシャンだ。そしてヨーロッパのスカウト陣を驚かせたのが、デンマークU21代表FWアンドレアス・スコフ・オルセンの獲得だ。昨シーズン、FCノアシェランでは公式戦36試合に出場し22ゴールと大暴れ。あのバルセロナやトッテナム・ホットスパーまで獲得に動いていたというのだから、評価は推して知るべしである。またクラブ・ブルッヘから移籍してきたステファン・デンスビルも、昨シーズンのベルギー1部ではナンバーワンの評価を受けていたセンターバックだ。
ボローニャは近年にスカウト網を強化。ビゴン強化部長は「北にいる選手たちは真面目なのでチェックを続けていた」のだという。急性白血病で治療中のミハイロビッチ監督も治療経過は順調、スタッフは分業して指導しながら復帰を待っている。今シーズン、ボローニャが旋風を起こしそうな予感は十分。果たして冨安は、成長を果たしチーム貢献できるのか。注目の1年が始まる。(神尾光臣=イタリア通信員)