【コラム】戸塚啓
「選手を育てる」ことが評価されるべき
2017年02月23日 17:36
サッカー
内なる競争を促す施策が、各クラブへの配分金の見直しである。均等配分金が増額され、理念強化配分金が新設された。原資となるのは、『ダ・ゾーン』と結んだ巨額の放送権料である。
「均等」ではなく「傾斜」の理念強化配分金は、より高みを目指すクラブへのリーグからの投資という位置づけだ。監督や選手の獲得を通してサッカーの魅力を高めるクラブの登場に期待する、というのがJリーグの狙いである。身の丈に合わせた経営から、投資型の経営へシフトするクラブの登場を促す、という言い方もできるに違いない。
17年にJ1で優勝したチームには、総額15・5億円が10億円、4億円、1・5億円の3回に分けて配分される。これとは別に、J1優勝の賞金が3億円ある。
監督や選手を獲得する原資としては、それなりの規模だろうか。年俸5億円クラスの選手なら、複数年契約が可能になりそうだ。
Jリーグからクラブへの投資は、17年から19年までを第一ステップと位置づける。この3年間はJ1へ集中的に投資し、国内トップレベルの引き上げを目論む。理念強化配分金をめぐって内なる競争が激化することで、国際的な競争力を高めていく、というシナリオなのだろう。
ACLでの復権は、Jリーグの対外的な価値を高める。アジアにおける新たな事業の開拓へつながる。J1の上位クラブへの投資がJリーグ全体に利益をもたらす、という考え方は成り立つはずだ。
『ダ・ゾーン』を原資とした投資は、育成にも注がれるべきである。投資先の最上位が育成であるべきだし、すでに決定している施策があれば発表してほしいものだ。
傾斜配分金の使いかたにも、育成を含めていい。たとえば、アカデミーからトップチームへ昇格した選手のリーグ戦出場が、一定期間内に一定数へ到達したら、それに対して配分する。アカデミーに時間と、お金と、人材を注いだクラブには、相応のリターンがあっていい。
育成にはそれだけの価値がある。競争社会が著しい格差を生まないためにも、「選手を育てる」ことが評価されるべきだと思うのだ。(戸塚啓=スポーツライター)