【コラム】戸塚啓
森保第2次政権 まだ見ぬ景色を目ざす
2023年01月18日 21:00
サッカー
森保一監督の続投が決まった時点で、コーチ陣の入れ替えは必要だと考えていた。スタッフを入れ替えることによって、これまでと違う着眼点が持ち込まれるからだ。
名波監督は元日本代表のW杯プレーヤーだ。森保監督とは、日本代表でともにプレーしたこともある。
クラブレベルではジュビロ磐田で黄金時代を築き、キャリアの終盤はケガに悩まされた。勝敗の責任を背負ってピッチに立ったことがあり、試合に出られない歯がゆさを噛み締めた経験も持つ。主力選手にも控え選手にも、それぞれの心理を察して接することができるだろう。
監督としては、ジュビロ磐田と松本山雅FCを指揮した。磐田ではJ1昇格を果たしたが、最後のシーズンは低迷した。松本ではJ3降格を防ぐことができず、J3からJ2への復帰も果たせなかった。
選手としてのキャリアが眩しいものだっただけに、監督としての実績は控え目な印象だ。それでも、周囲から期待される結果を残せなかった経験を、日本代表コーチの立場で生かすことはできるはずだ。
パリ五輪を目ざすU―22日本代表の大岩剛監督と名波コーチは、清水商業高校の同級生だ。日本代表や磐田でもチームメイトだった。日本代表と五輪代表の連携を、スムーズにしていくことも見込める。
前田コーチはJ1リーグで2度の得点王に輝き、アルベルト・ザッケローニ指揮下の代表でアジアカップやコンフェデレーションズカップに出場した。とりわけストライカー陣にとって、頼もしい存在となりそうだ。
20年の現役引退後は、プロキャリアをスタートさせた磐田でU―18のコーチと監督を任されていた。高校1年から3年と言えば、心身ともに成長過程だ。成長のスピードは選手によってまちまちで、細やかな気配りが求められる。プロチームの指導とは異なる経験をしたことで、色々な気づきを得られたはずだ。
横浜FCのコーチに就いた中村俊輔氏が、代表活動中は日本代表を指導することも濃厚と見られている。
日本代表や五輪代表の人事は、選考されるタイミングでフリーであることが条件のひとつとなっていた。ジェフユナイテッド千葉を指揮していたイビチャ・オシムさんが、シーズン途中で日本代表監督になったのは、あくまでも例外的なケースだった。
中村俊輔氏が代表スタッフに加わることになれば、Jクラブとの兼任という新たな選択肢が生まれる。クラブ側の理解と協力は必要だが、日本代表にとっても、指導者にとっても有益と言える。
中村氏にとどまらず、その時々のチームの課題に応じて、スポット的に指導者を招いてもいい。森保監督、名波コーチ、前田コーチに中村氏が加わり、さらに元日本代表のW杯経験者が一時的でもスタッフ入りしたら、選手にも刺激になるのではないだろうか。
スポット参戦は、日本人指導者に限らなくてもいい。外国人でも、もちろん構わない。
まだ見ぬ景色を目ざしていくのだ。前例にとらわれないトライをしていいと思うのだ。(戸塚啓=スポーツライター)