【コラム】戸塚啓
もう1つのW杯 強豪を相手にする日本代表
2019年09月23日 09:00
サッカー
ジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)が率いる日本は、開幕戦特有の緊張感に縛られていた。両手と両足を鎖でつながれているように動きが重く、背中に鉄板が入っているかのように身体が固いのだ。気持ちも凝り固まっていた。ガチガチという音が聞こえてきそうだった。
開始早々にトライを奪われ、それでも30対10で勝利した試合には、戦術的、技術的に課題が多かった。ラグビーに詳しくない僕が見ても、うまく試合を運べていないのが分かった。
翌21日に、オーストラリア対フィジーの一戦をテレビで観た。力強くて逞しく、それでいてスピード溢れる選手たちが、日本対ロシア戦より明らかにミスの少ないラグビーを展開していた。敗れたフィジーも、クオリティの高さを見せた。
フランス対アルゼンチン戦はスタジアムで観た。ワールドランキング8位で準優勝3回の“レ・ブルー”と、前回ベスト4の“ロス・プーマス”の激突も、強度の高い攻防だった。プール2位以内を賭けた生き残りの戦いは、23対21でフランスが際どく勝利する。サッカーと同じくラグビーでも、このカードはかなりのハイレベルだった。
オーストラリアとフィジーのプールDには、今年の欧州6か国対抗戦(シックスネーションズ)優勝のウェールズもいる。フランスとアルゼンチンのプールCには、前日本代表HCのエディ・ジョーンズが立て直したイングランドが同居する。
サッカーW杯より出場国の少ないラグビーW杯は、それだけ強豪揃いである。限られた国の争いと言われることもあるが、だからこそ、上位国の牙城を崩すのは簡単でない。アジアで初めて開催されている大会は、相当にタフなサバイバルマッチなのである。
ジョセフHCと彼の仲間たちは、史上初のベスト8進出をターゲットとする。開幕戦の緊張感を差し引けば、日本も強豪国と同レベルのラグビーができるのだろうか。
大会の初戦はもちろん大切だ。ただ、初戦からすべてがうまくいかなければ
いけない、というわけでもない。
課題が多かったロシア戦に、好転の兆しを見つけることはできる。
W杯初出場の姫野和樹は、持ち味とするボールキャリーを見せつけた。終盤にフルバックのポジションに入った山中亮平も、効果的なキックでエリアを確保した。
さらに言えば、ロシア戦にはアマナキ・レレイ・マフィと福岡堅樹が出場していない。大会直前の南アフリカ戦で負傷したふたりは、プール戦の間に復帰してくる見込みだ。予定どおりに彼らが戻ってくれば、チームに勢いがもたらされるだろう。
優勝候補でない日本のような立場のチームは、大会を通じて成長できるかどうかがポイントになるはずだ。そして、ロシア戦から右肩上がりにパフォーマンスを上げていくことで、かつて到達したことのない高みが見えてくるに違いない。(戸塚啓=スポーツライター)