【コラム】戸塚啓
日本代表 チームのバランス 武器だけでなくベテランも必要
2018年03月16日 06:00
サッカー
選手のベースはクラブにある。クラブという日常で結果を残している選手が招集されるのは、選考基準としてフェアで分かりやい。しっかりアピールをすれば選ばれるとのモチベーションが、国内外を問わずに選手たちの間で広く共有されていく。
実戦から遠ざかっている選手は、ゲーム体力やゲーム勘に不安が生じる。メンタル的な影響も見逃せない。とりわけ攻撃のプレーヤーは、積極性を抑えがちになる。ミスをしたくないとの心理が働く。相手にとって怖くない選手になってしまう。
クラブで結果を残している選手を招集するのは、その意味でも論理的である。エイバルの乾の名前がないのは、宇佐美を呼びたかったとしても理由に乏しいが。
ハリルホジッチ監督にとって今回の欧州遠征は、W杯へ向けた最終的な絞り込みの機会だ。昨年11月以来の活動だけに、これまでの復習的な意味合いも含まれるが、招集した選手は漏れなく使ってほしい。対戦相手は少しばかり物足りないが、そのぶん思い切ったトライができるはずだ。
一方で、気になることもある。
アルジェリアを率いた4年前のブラジルW杯で、ハリルホジッチ監督は20人のフィールドプレーヤーのうち19人を起用した。控えのGKを除いてピッチに立たなかった選手は、ひとりだけだった。
アルジェリアと同じように、ベスト16で敗退したその他の7か国はどうだったか。
ギリシャは5人、チリは4人、メキシコとスイスは3人が、試合に出場することなく大会を終えている。ナイジェリアとアメリカは2人で、ウルグアイはアルジェリアと同じ1人だった。
ブラジルW杯のウルグアイは、第1戦でCBルガーノが負傷し、第3戦でスアレスが退場処分を受けた。こうした事情もあって、タバレス監督は多くの選手を起用することになったと考えられる。
いずれにせよ、ブラジルW杯でアルジェリアを指揮したハリルホジッチ監督は、たくさんの選手をピッチに送り出していた。できるだけ多くの武器を用意し、試合によって大胆にスタメンを入れ替えた。
その時々で調子のいい選手を起用してきた日本でのチーム作りから判断すると、ロシアW杯にも同様のスタンスで臨むと考えられる。今回の欧州遠征の選手選考にも、「武器選び」という表現が当てはまる。
それが悪いと言うつもりはない。
ただ、チームのバランスは取れるだろうか。
W杯における日本代表の成功例を振り返ると、チームを下支えするベテランの存在に気づく。02年の日韓W杯では中山雅史と秋田豊が、10年大会では川口能活、楢崎正剛、中村俊輔が、控え選手の立場でチームのまとまりを作り出している。W杯出場の経験があるだけでなく、レギュラーとしてプレーしたこともある彼らが後方支援したチームは、グループステージを突破してベスト16入りを成し遂げた。
W杯で効果的に使える武器を選び、揃えようとしているハリルホジッチ監督は、チームのバランスをどこまで考えているのだろう。武器だけでなくベテランも必要だと、僕は思うのだが。(戸塚啓=スポーツライター)