【コラム】戸塚啓
サッカー界 今年の漢字は?
2021年12月18日 13:20
サッカー
サッカー界にふさわしい一文字は何だろう。
個人的に思い浮かべるのは「差」だ。
53年ぶりのメダルを目ざした東京五輪は、ベスト4に終わった。
グループリーグでは南アフリカ、メキシコ、フランスに3連勝したが、決勝トーナメントでは一度も勝てなかった。ニュージーランドとの準々決勝はPK戦で辛うじて勝利し、スペインとの準決勝は延長後半に力尽きた。
五輪は中2日の連戦である。酷暑にも見舞われた。疲労が蓄積していくなかでは、チームとしても個人としても「土台の強さ」が明らかになる。「本質」が明らかになると言っていいだろう。
スペイン戦は0対1だったが、スコア以上の差が横たわっていた。メキシコとの3位決定戦でも、力の差を見せつけられた。表彰台に立った2か国との間には、簡単には埋められない「差」が存在していたのだ。
カタールW杯アジア最終予選では、「差」を詰められている現実を突きつけられた。
オマーンとの開幕戦は、明らかな準備不足だった。僕自身も「最終予選に簡単な試合はないとしても、何とか勝つことができるだろう」と考えていた。クロアチア人のブランコ・イバンコビッチ監督が日本をどれぐらい研究していて、具体的かつ効果的な対策をしてきたことに、思いが及んでいなかった。ひと言でまとめれば、過信していたのだ。
オマーンに出鼻をくじかれたことで、続く中国戦からは油断や慢心にとらわれてはいないだろう。しかし、強さを見せつけるには至っていない。
アウェイのサウジアラビア戦は、柴崎岳のパスミスが失点につながった。そのまま0対1で敗れてしまったのだが、彼のミスが無かったとしても0対0である。
日本にはクオリティを持った選手が多い。ヨーロッパのクラブで試合に出ていて、結果を残していても、招集されない選手もいる。豊富な選択肢をもっと生かすことができれば、もっと余裕を持った試合運びができるだろう。
決定機を確実に生かすのも重要だ。ホームのオマーン戦でも、前半27分に伊東純也が決定機を迎えた。ここで先制できていれば、試合の行方は変わっていただろう。アウェイのサウジアラビア戦でも、29分に大迫勇也がGKと1対1の場面を迎えている。
前半のうちに先制したり、後半の早い時間帯に先制したりすれば、とくにアウェイゲームでは相手は前に出てこざるを得ない。カウンターがハマりやくすなり、最終的に点差が開く、という試合が実現可能になる。
それでも、大前提としてアジア各国の力関係が拮抗しているのは間違いない。海外組が集合から間を置かずに試合を消化していくなかでは、コンディションで優位に立つことが期待できず、残り4試合も際どい試合が続きそうだ。
2022年はカタールW杯が開催される。来年の漢字は、日本代表の活躍や躍進を隆に選ばれてほしいものだ。(戸塚啓=スポーツライター)