【コラム】戸塚啓
ヴィッセル神戸 継続性と一貫性に欠けるチーム作り
2020年09月23日 17:00
サッカー
彼の気持ちは理解できる。しかし、「このタイミングで?」という唐突感は否めない。
新型コロナウイルスの感染拡大による中断の影響で、今シーズンのJリーグはスケジュールがタイトだ。フィンク監督の退任直後は23日、26日、30日、10月4日と中2日から中3日で4連戦となっている。ここ7試合勝利から遠ざかっているとしても、監督交代のタイミングとしてはふさわしくない。10月4日までは指揮を執り、5日後の10日の試合から新監督(あるいは暫定監督)に任せるほうがベターだった。
18年10月から20年4月まで指揮したファン・マヌエル・リージョにしろ、フィンク前監督にしろ、目の付けどころはいいと思う。問題は継続性と一貫性に欠けるところだ。17年以降は4年連続で、シーズン途中に監督が代わっている。これでは継続性のあるチーム作りができないし、一貫性も生まれてこない。
そもそも神戸は、どのようなチームを作りたいのだろう。
アンドレス・イニエスタのようなビッグネームをこれからも獲得し続けて、選手の「個」を押し出したサッカーをするのか──それはそれで、ひとつの方向性に成り得る。
フィンク前監督はチームを去ったが、イニエスタのいる神戸は依然としてスタジアムへ足を運びたいチームだ。リーグ戦のタイトルをつねに争うことはできなくとも、ファンが観たいと思う選手を絶えず手元に揃えるのは、興行的観点に立ったチーム作りとして成立する。
思いがけないプレゼントのようなタイトル獲得ではなく、リーグ戦の優勝争いの常連になりたいのであれば、継続性と一貫性を持ったチーム作りが必要だ。チームとしてどのようなサッカーをするのかを打ち出し、その方向性を実現できる監督を招くのだ。
必ずしも攻撃的なサッカーをする必要はないだろう。カウンタースタイルだって、極めれば独自のチームカラーになる。
大切なのは、ホームタウンの人たちの思いだと考える。日頃からクラブを支えてくれて、スタジアムへ足を運んでくれるホームタウンの人たちが誇りを感じられるサッカーが、そのチームに根づいていくのが理想だ。
神戸はどうするのだろうか。元日本代表監督のハビエル・アギーレが候補者としてあがっているが、海外渡航がいまだ世界的に制限されているなかで、すぐに来日してすぐに仕事に取り掛かれるのか。
個人的には、クラブを良く知るOBの監督就任はメリットが多いと感じる。三浦淳寛スポーツダイレクター(SD)の監督代行就任が噂されているが、彼とともに中長期的視点で「神戸のサッカー」を作り上げていくのはいい選択肢だと思う。神戸を応援する人たちの思いが反映されたサッカーを、三浦SDならピッチ上に描くことができるはずだからだ。(戸塚啓=スポーツライター)