【コラム】戸塚啓
日本代表 続出するケガ人の代役は? ベテランの力を
2017年08月15日 06:00
サッカー
欧米人のライフスタイルにおいて、バカンスはスケジュールに書き込まれたものだろう。休暇を取るな、とは言わない。ただ、タイミングは考えるべきではなかったか。
6月の離日から再来日まで、ハリルホジッチ監督はJ1リーグ4節分を見逃している。視察の必要はなかったのだろうか。
何しろ、レギュラークラスにケガ人が続出しているのだ。バカンスを早めに切り上げてJリーグを視察し、「このポジションには誰が必要なのか」といった見極めを、自身の眼で進めていくべきだったと考える。
代表監督がJリーグの現場へ足を運ぶことには大きな意味がある。自らが視察へ行くことで、「代表の扉はいつでも、誰にでも開かれている」とのメッセージが説得力を持つ。
指揮官の留守中もスタッフが視察を続けていたが、監督がバカンス中では緊張感も生まれない。「オーストラリア戦は決戦」といった発言が、どこか虚しく響いてしまう。「それなら、なんでもっと早く帰国しなかったの」と、突っ込みたくなってしまうのだ。
続出するケガ人の代役は、果たして誰になるのだろう。
Jリーグでのパフォーマンスを見ると、ベテランと呼ばれる年齢の選手たちが元気だ。中村俊輔、中澤佑二、遠藤保仁、中村憲剛らのW杯経験者が、夏の連戦のなかで存在感を発揮している。彼らのプレーは逞しく、頼もしい。
現時点でコンディションに不安のない海外組も、シーズン開幕後にどれぐらいクラブでプレーできるのかは不透明だ。いくつかの不確定要素をはらむなかで、彼らベテランはチームに経験と精神的ゆとりをもたらしてくれる。「来年のW杯に出るかどうか分からない」と説明して今野泰幸を招集するなら、中村俊や中村憲も構想に含んでいい。現在のパフォーマンスであれば、ケガ人が出ていなくても招集したいほどである。
ワールドカップ最終予選の最終局面は、ハリルホジッチ監督にも、手倉森誠コーチにも未知の領域だ。プレッシャーが最大値まで高まるなかで、修羅場をくぐり抜けた選手がチーム内に控えているのは大きい。ピッチ内だけでなくベンチにもいることで、チーム全体のメンタリティに芯が通るのだ。
ハリルホジッチ監督には、彼らベテランのプレーをスタジアムで観てもらいたいものである。(戸塚啓=スポーツライター)