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目の前の敵と戦う 2試合に共通する大きな課題

2019年11月21日 18:00

サッカー

目の前の敵と戦う 2試合に共通する大きな課題
ベネズエラ戦、試合を終えて厳しい表情で場内一周する日本イレブン Photo By スポニチ
 南米の2か国に、連続してKO負けを喫したような印象だ。U-22日本代表のU-22コロンビア戦と、日本代表のベネスエラ戦である。
 11月17日に行われた東京五輪世代の一戦は、前半を0対0で終えている。もっとも、内容が互角だったわけではない。観衆からため息がこぼれるようなミス、判断が明らかに間違っているミス、まごまごとしたミスが連発し、自陣から抜け出せないような展開が続いた。堂安律と久保建英がどうにかしてボールを引き出そうとするが、3-4-2-1のシステムが5-4-1のようになり、ボールを奪っても前線に堂安と久保、それに1トップの上田絢世の3人しかない状況では、しっかりとした技術を持つコロンビアを攻略することはできない。主導権を握られていくのは必然だった。

 失点シーンではいいようにボールを回された。ペナルティエリア内に選手はいるのに、あっさりとシュートを打たせてしまうのである。

 攻撃も守備も距離感が悪く、勢いを削がれるようなボールの失い方は後半も繰り返された。交代選手の投入も、システム変更も奏功しない。0対2の敗戦は必然だった。

 2日後の19日には、日本代表が同じような試合をすることとなる。

 13日までに全員が来日したベネズエラはコンディションが整い、4-3-3のシステムにふさわしい戦術を身に着けていた。点取り屋のサロモン・ロンドンにフィニッシュさせることから逆算して、攻撃を組み立てていた。攻撃の権利を放棄するようなミスをした日本とは対照的である。局面でのバトルも激しく、強く、逞しかった。すべてに無駄がなく、スキを見せないチームである。

 コロンビア戦の再生映像のような失点もあった。GK川島永嗣からすれば、4失点のいずれも防ぎきれないものだった。

 いつもとは違うメンバーで臨んだチームにとって、開始8分の失点はダメージが大きかったかもしれない。流れを持っていかれたところはある。

 それにしても、経験のある選手はピッチに立っている。久しぶりの国際試合に臨む選手もいたが、全員が森保一監督のもとでプレーしたことがある。誰かがいないからうまくいかなかった、というのは自己否定に等しい。

 南米勢相手の連敗を持って、森保監督の手腕を疑うつもりはない。U-22との兼任を限界とする見方もあるようだが、ここからしばらくはU-22日本代表に専念できる。東京五輪からW杯アジア最終予選までの時間的猶予がないのは気がかりだが、最終予選のスタートさえ慎重に乗り切れば、そこから先は世代をつないだチーム作りを加速させることができる。日本代表の主力クラスを東京五輪のオーバーエイジとして取り込めれば、金メダルを目標とする道のりがそのまま最終予選突破へのプロセスにもなる。

 むしろ気がかりなのは、一人ひとりの選手に逞しさ(たくましさ)が感じられないことだ。U-22日本代表にせよ、日本代表にせよ、臆することなく相手に挑んでいく選手がどれだけいたか。システムや戦略次第で内容を改善できたところがあるとしても、目の前の敵と戦うという根本的な部分での物足りなさが、2試合に共通する大きな課題だったと思うのだ。(戸塚啓=スポーツライター)

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