【コラム】戸塚啓
オーストラリア戦が重要なのは変わらない
2017年08月30日 20:00
サッカー
消化試合がひとつ少ない日本は、勝点「17」である。オーストラリアに敗れるようなことがあっても、サウジアラビアに勝点で抜かれることはない。9月5日の直接対決で引き分け以上の結果を残せば、W杯出場の2位以内を確保できる。
UAEのアシストに感謝しなければならないが、サウジアラビアがもし勝っていたら?
ホームのオーストラリア戦に、さらに重いプレッシャーがかかっていただろう。「絶対に勝たなければいけない」と言われている一戦が、「絶対に、絶対に、絶対に、勝たなければいけない」一戦となっていた。
サウジアラビアの敗退に、胸をなで下ろしている場合ではない。そもそもの論点は、UAE対サウジアラビア戦がなぜ29日に行なわれたのか、である。
アジア最終予選の第9節は、日本のグループBだけでなくグループAも31日開催で足並みを揃えている。UAE対サウジアラビア戦だけが、29日に行なわれた。
試合を早く開催すれば、そのぶんだけ試合間隔は空く。サウジアラビアは30日にも日本戦を行うジッダへ戻り、準備へ取りかかることができる。長距離移動や時差の影響もほとんどない。気候もほぼ同じである。
一方の日本は、現地時間9月2日の午前にジッダに到着する予定だ。長距離移動による疲労と6時間の時差を、試合までの3日間で乗り越えるのは簡単でない。その結果としてサウジアラビアに敗れるようなことがあったら――責められるのは、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督と選手たちだけなのだろうか。僕にはそうは思えない。
海外組が合流できるタイミングを考えると、日本対オーストラリア戦を29日に行なうのは不可能だった。だとすれば、「UAE対サウジアラビア戦も同日開催に」と、声をあげるべきだったのではないか。スポーツの枠を超えた理由で29日になったとしても、サウジアラビアは明らかなアドバンテージを得ている。不利益を被る日本が、沈黙を守る必要はない。
勝敗はディティールに宿るのだ。次回以降のW杯予選で同じことを防ぐためにも、なぜそうなったのかを確認し、広く知らせていくべきだと思う。
そして、オーストラリア戦が重要なのは変わらないことも、改めて認識するべきである。9月5日のアウェーゲームを、厳しい条件下で戦うこともまた、何ひとつ変わりはない。(戸塚啓=スポーツライター)