【コラム】戸塚啓
代表“無冠” メッシ誕生日に起死回生なるか コパ・アメリカ崖っぷちアルゼンチン
2019年06月23日 16:00
サッカー
08年の北京五輪で金メダルを獲得しているが、メッシという選手のスケールにはいまひとつふさわしくないタイトルだ。ファンを納得させる材料には、残念ながら成り得ない。
コパ・アメリカには07年に初出場した。チーム最年少の20歳は背番号18を背負い、グループリーグ初戦からスタメンに名を連ねる。準々決勝と準決勝ではゴールをマークした。アルゼンチンは決勝へ進出するが、ブラジルに0対3で敗れた。
11年は背番号10を着けた。バルセロナでの実績を考えれば当然で、開催国のアルゼンチンは91年以来の優勝をメッシに託す。ところが、準々決勝で伏兵パラグアイにPK戦で敗れてしまう。メッシは大会を通じてノーゴールに終わった。
15年はキャプテンを任された。前年のブラジルW杯で準優勝に終わっっていることもあり、メッシは高いモチベーションで開催国チリへ乗り込む。アルゼンチンは決勝トーナメントでコロンビア、パラグアイを退け、チリとのファイナルに挑む。しかし、両チーム無得点のままPK戦までもつれた試合は、チリの歓喜という結末に着地する。
チームの結果が出なければ、背番号10を着けた主将が批判を浴びるのは避けられない。「バルセロナではリーグ戦の試合数より多くの得点を決めているのに、コパ・アメリカではたった1点しか取っていない」と、地元メディアに言われてしまうのだ。
100周年記念として翌16年に開催されたコパ・アメリカで、メッシは得点ランキング2位の5ゴールをマークする。準々決勝と準決勝でネットを揺らし、周囲を納得させる結果でチリとの決勝戦を迎えた。
しかし、決勝では沈黙を強いられる。2年連続のスコアレスゲームは、またしてもPK戦に決着が委ねられた。
アルゼンチンのひとり目はメッシである。ペナルティスポットに向かった背番号10は、短い助走から左足を振り抜く。チリのGKクラウディオ・ブラボの逆を突いたシュートは、しかし、バーを超えていった。4人目のルーカス・ビリアも決められなかったルアルゼンチンは、2対4で敗れたのだった。
試合後のピッチで涙をこぼしたメッシは、「とても重要なPKを外してしまった。自分の役目は終わった」と発言する。これが代表引退宣言として、瞬く間に世界へ拡散されていった。
およそ1か月後には前言を撤回し、ひとまず引退騒動は沈静化する。しかし、アルゼンチン代表では依然としてタイトルをつかめない。予選敗退の危機にも瀕した18年のロシアW杯では、決勝トーナメント1回戦でフランスに3対4で打ち負けた。
メッシも31歳になる。出場できる大会には、そろそろ限りが生じつつある。今回のコパ・アメリカには、心中期するものがあるはずだ。
ああ、それなのに!
アルゼンチンは初戦でコロンビアに0対2で完敗し、パラグアイとの第2戦は1対1のドローに終わった。カタールとの最終戦に勝てば2位浮上の可能性もあるが、引分け以下ならグループリーグ敗退も有り得る。
メッシの誕生日は6月24日だ。
31歳最後の23日に行われるカタール戦で、チームをグループリーグ敗退から救うことができるのか。
32歳になって最初の試合となるはずの決勝トーナメント1回戦を、代表のチームメイトとともに戦うことができるのか。
母国アルゼンチンに、メジャータイトルをもたらすことができるのか──。(戸塚啓=スポーツライター)