【コラム】戸塚啓
ファンサービス プロスポーツは選手とファンが一体になってこそ
2019年02月21日 17:20
サッカー
中日ドラゴンズの松坂大輔投手が、ファンサービスでケガをしてしまったことがニュースで取り上げられている。選手の安全は確保されているのか、部外者ながら少し心配になる。チーム関係者にファンサービスについて聞くと、「普通に対応しています」とのことだった。
選手にとってのキャンプは、一か月前後の長丁場だ。「今日はちょっと急いでいるので、サインは明日でいいですか」といったことも可能である。
一方で、ファンは限られた時間のなかで練習場へ足を運ぶものだ。「今日がダメなら明日でいいです」という人ばかりではない。監督や選手にサインをもらったり、一緒に写真を撮ってもらったりするチャンスは一度しかない、というファンもいるはずだ。
一度きりの機会でサインをもらうことができなければ、ファンはがっかりするに違いない。好きだったチーム、好きだった選手への興味を失ってしまうかもしれない。ファンの支えがあってこそのプロスポーツだから、チーム側も選手の都合や安全確保ばかりを優先するわけにはいかない。とても悩ましいところだ。
オークションサイトに出品するために、サインをもらっているファンもいるという。「選手が書いた色紙が、1時間も経たないうちにオークションにかかっていたこともありますよ」と、あるプロ野球のチーム関係者から聞いた。
オークションに出品されない対策としては、サインをもらうファンの名前を書くのが一般的だ。ところが、人気選手のサインの列は長蛇になる。一人ひとりの名前を書き加えるだけでも、数が多くなれば相当な時間と労力になる。ファンを待たせてしまうことになり、他でもない選手自身にも負担となるから、とにかくサインだけを書くしかない。誰でも自分のものと感じられる一枚が、出来上がってしまうことになる。
チームとファンの利益を同時に追求するなら、ファンサービスの日時をあらかじめ決めるのがベターだ。ホームページなどで事前に告知をしておけば、ファンは予定を合わせることができる。チーム側は警備を万全にできる。選手は割り切って対応できる。
野球でもサッカーでも、観衆の声援は選手の力になる。スタンドがガラガラでは、プレーに熱がこもらないだろう。
プロならではのダイナミックなプレーや妙技は、観衆に非日常の興奮を提供する。観衆がグラウンドに注ぐ声援がまた、選手たちの力を引き出していく。
選手とファンが一体になってこそ、プロスポーツはその魅力を最大限に発揮する。お互いの存在が支えになっていると考えれば、選手とファンが触れ合う機会はもちろんあっていい。誰もが笑顔になれるようなファンサービスであってほしい、と思う。(戸塚啓=スポーツライター)