データ収集用テクノロジー 肉眼では見えない投手の癖を見つけることが可能に 行き過ぎ、放置を懸念

2023年06月12日 09:16

野球

 スポーツイラストレイテッド誌のトム・ベデューチ記者が、球場内に16台のカメラを設置し、コンピューターで3D映像を作る「キナトラックス社」のシステムが、相手投手の癖を見つけることに使われており、今後行き過ぎになる恐れがあると警告している。
 高速のマルチカメラシステムはバイオメカニクス(生体力学)のデータを収集するために使われている。腕、肩、足など、試合中の投球時の体の動きを細かく再現、それによりダグアウトから見ている投手コーチよりも早く投手の疲労に気付くことができ、メカニックの改善にも使える。今季も投手のケガが多発しており、それを防ぐために重要なシステムだ。

 2019年に5球団が同社のシステムを購入したが、今季は15球団が使っている。そのシステムが、相手投手の球種ごとの癖を発見するのにも使われ始めているという。投球中の骨格の動きをオーバーレイ(重ね合わせる)し、特異性を見つけ出す。あるいは投手がスプリットの握りをした時の、前腕の筋肉のたわみを見つける。専任のスタッフが数人いて、試合中、フィールドの選手やコーチが肉眼では見つけられないちょっとした違いや癖を、テクノロジーで発見し、ベンチに報告する。その情報を参考に、ベースコーチやダグアウトの中の誰かが投手を観察し、球種を暴き、打者にサインで伝える。

 あるチームの投手コーチは「最近ではゲームプラン以上に、うちの投手に癖が出ていないか、チェックするのに時間とエネルギーを取られている」とベデューチ記者に明かしている。

 一方、打者のミーティングでは、その日の先発投手にどうアプローチするかよりも、癖の説明に時間を使う。ゆえに今では、投手がひどい打たれ方をすると、セットの仕方、グラブの位置など、癖が出ていないかをまず疑う。パラノイア(被害妄想)もひどくなっている。動きをシンプルに、ワインドアップをやめてセットポジションから投げる投手が増えているし、グラブの中でボールを握っている時は、身体に押し付け、なるべく動かさないようにする。あるチームのベンチコーチは「どこかがやったら、他チームも追随する」とテクノロジーによる癖探しがエスカレートすることを心配している。

 現時点でルール違反ではないが、肉眼ではなく高度なテクノロジーを使って癖を暴く行為を放置していいのか?是非を論ずる必要がある。

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