ナ・リーグ本塁打王のアロンソはメジャーの当たり屋の一人、大学時代に受けた特殊トレーニングとは

2023年06月12日 13:48

野球

ナ・リーグ本塁打王のアロンソはメジャーの当たり屋の一人、大学時代に受けた特殊トレーニングとは
ブレーブス戦で死球を受け、悶絶するメッツのアロンソ(AP) Photo By スポニチ
 ニューヨークタイムズ紙が11日(日本時間12日)メジャーの“当たり屋”について特集している。
 1887年にさかのぼり、野球のルールでは、打者は投球が体の方に向かってきたらよけなければならないとなっている。しかしあからさまに自らボールに向かっていかない限り、必ずしもそのように判定されていない。

 昨年のワールドシリーズ第6戦、アストロズのマーティン・マルドナド捕手は1点負けていて、6回の先頭打者。打席内の位置をいつもの真ん中ではなく、ベース寄りに立って死球を狙いに行った。狙い通りボールが肘に当たって一塁へ。フィリーズはマルドナドが逃げようとしなかったと判定に抗議。しかし、リプレークルーは意図的に当たったという証拠は見つけられなかった。ベースの側に立っていたマルドナルドは、そのままの位置で肘にボールを受けたからだ。

 その回、ヨルダン・アルバレスに3点本塁打が出て逆転、シリーズの決着がついている。

 死球にはリスクが伴う。言うまでもなく身体を危険にさらすからだ。7日(日本時間8日)、メッツの主砲ピート・アロンソが、ブレーブスのチャーリー・モートンの96マイルの直球を左手首に受けた。骨挫傷で負傷者リスト入り、復帰まで4~6週間かかる。とはいえアロンソが死球を受けても驚く人は少ない。普通は本能的によけるが、アロンソは勇敢というか、愚かというか、よけないことで知られているからだ。

 この5年間で56度死球を受けたが、その理由はフロリダ大時代に受けた特殊なトレーニングにある。ピッチングマシーンでスポンジのボールが体にぶつけられるのだが、脳に“よけるな”と指令を出す。よけない癖が付けば、次は球の軌道を見定め、身体のどこに当てるかを微妙にコントロールする。少し身体を捻じ曲げ、手首のような繊細なエリアには当たらないようにする。今回はしくじったが、当てる習性が身についた。大学の試合で死球から逃げたら、監督に次の練習で走らされたため、真面目に特殊トレーニングに取り組んだのである。

 現役選手で一番死球が多いのはヤンキースの左打者アンソニー・リゾで207回。彼は死球を狙って打席に立ったりはしないと説明する。得意は内角低めで、そこならなんだって打てるが、外角も対応できるようにベースの近くに立つ。「死球を狙って打席に立ったら、ど真ん中の真っすぐを見逃してしまう。これは私のアプローチ。相手投手は、打者の打席での位置を見て、投げてくるからね」。

 メッツのマーク・キャナは過去2年間に限ると55死球でメジャー最多、9年のキャリアでは通算112死球だ。キャナは「死球のおかげで、プロ野球選手を続けられている。出塁率が上がり、得点を挙げられる」と言う。打席の3・47%が死球で、彼がプレーしている期間のメジャー平均の3倍以上だ。もし死球がなければ通算の出塁率は・348から・324に下がる(リゾは・366から・345に下がる)。とはいえキャナも死球を狙っているわけではない。右投手は右打者のキャナに対し、たいてい内角を直球で攻めてくる。これが苦手で、投手が投げにくいようベースの側に立っている。

 ちなみに近年、メジャーきっての当たり屋といえばジェイソン・ケンダール(1996年から2010年)だった。パイレーツのオールスター捕手で15シーズンで254死球は史上5位だ。「当たれば当たるほど、対処するのがうまくなるし、身体も守れる」と振り返り、実際大ケガを免れている。

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