【甲子園】花巻東・麟太郎「持っていた」最後の打席9回ヘッスラ終戦 早くも争奪戦火ぶた

2023年08月20日 05:05

野球

【甲子園】花巻東・麟太郎「持っていた」最後の打席9回ヘッスラ終戦 早くも争奪戦火ぶた
<花巻東・仙台育英>9回、佐々木麟は二ゴロに倒れ、執念のヘッドスライディングを見せるもアウトとなり試合終了となる(撮影・椎名 航) Photo By スポニチ
 【第105回全国高校野球選手権記念大会第12日準々決勝   花巻東4―9仙台育英 ( 2023年8月19日    甲子園 )】 怪物スラッガーの夏が終わった。歴代最多の高校通算140本塁打を誇る花巻東(岩手)の佐々木麟太郎内野手(3年)は19日、準々決勝で昨夏王者の仙台育英(宮城)と対戦。4打数無安打2三振に終わり、4―9で敗れた。猛攻を見せた9回も二ゴロで最後の打者となり、甲子園で一度もアーチを放つことはできなかった。今秋ドラフトの1位候補として注目の進路は明言しなかったが、プロ志望届を提出すれば争奪戦が展開される。
 夏の終わりは、仲間への感謝で胸がいっぱいだった。野球の神様からプレゼントされたかのような最後の1打席。9回は8人の打者がつなぎ、4点を返した。なおも、2死一、二塁。打席へ向かう佐々木麟は、涙をこらえるのに必死だった。

 「最後の打席は何か持っていたなと。大歓声の中でバットを振れて悔いはないです」

 5球目の内角直球を引っ張ると、好捕に阻まれ二ゴロ。ヘッドスライディングも及ばず試合は終わった。「つらくて苦しくて、でもここでプレーできたことを誇りに思いたい」。全身真っ黒のまま、その場にしばし座り込むと、3年間が走馬灯のように頭を巡った。

 0―9で迎えた9回、ベンチ内では自然と言葉が飛び交った。「麟太郎に回せ」。仲間の言葉だけではない。父でもある佐々木洋監督からは「このまま終わるのはダメだ。何とか爪痕残して、生きざま見せろ」と鼓舞され、全員が奮い立った。9番目の打者だった佐々木麟も、攻撃が始まると同時にヘルメットも手袋もつけた。3連打など、意地で得点を重ねていく。2死一、二塁で、打席が回ると、今大会一の声援が怪物スラッガーへ注がれた。

 聖地初本塁打も予感させたが、二ゴロ。仙台育英の強力投手陣に4打数無安打2三振と封じられた。「みんなに申し訳なくて」。スタンドへのあいさつを終えると涙に暮れた。

 苦しい夏だった。「結果も出ず迷惑をかけた」と天を仰いだように、岩手大会前に痛めた背中の影響もあり今夏は0本塁打。それでもチーム打撃に徹し、甲子園では3回戦まで打率5割だった。最終打席を涙しながら見守った佐々木監督は「なんとか打ってほしいなと。それだけです」と父親の顔に戻った。

 今秋のドラフト1位候補として注目される進路については「岩手に戻ってから決めると思います」と明言せず。ヤクルト、西武、日本ハム、オリックスが1位候補としてリストアップしており、プロ志望届を提出すれば争奪戦は必至だ。

 チームの伝統として、甲子園の土は持ち帰らなかった。高校通算本塁打も今後、U18日本代表や国体に出場すれば伸びる可能性がある。試合後の取材が終わり、部屋で一人になると、我慢していた涙が再びあふれた。「野球は大好きです」。届かなかった日本一。見果てぬ夢は新たなステージでかなえてみせる。(村井 樹)

 ▽今秋のドラフト1位候補 逸材がそろい「超豊作年」とされる。花巻東・佐々木麟のほか、野手では社会人No.1打者で外野手のENEOS・度会、「打てる捕手」とされる侍ジャパン大学日本代表の上武大・進藤らの名前が挙がる。投手では青学大を全日本大学野球選手権制覇に導いた右腕・常広、最速155キロの直球と多彩な変化球を持つ東洋大の左腕・細野、実績十分で高校No.1投手とされる大阪桐蔭の左腕・前田ら、即戦力の期待がかかる選手が並ぶ。

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